THE SHINE

□レクイエム〜遠い空に〜
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「お…にぃ…ちゃ…」
掠れた声…
「マリア、喋るな…」
ユーリがそう言ったけど…
彼女は首を横に振り…
「マリア…ね……お兄ちゃん…達の…うた…だいすき……だから…最期に…聞きたいの……」
ボクとユーリは顔を見合わせたが、主人にも頼まれ、歌うことにした。
「分かった。だが、これで最期にはさせない…望みを捨てるな。また、元気に私達の歌を聞いてくれ」

ユーリが一番分かっているハズなのに…
敢えてそう言った。

ボクはギターを弾き、ユーリは何時も歌っていた子守唄を紡いだ。
「きれいな…う…た」
彼女は微笑んで、二度と目覚める事のない眠りに就いた。


§ § §

「その後ね、ボク達はマリアちゃんの葬儀にも参列したんだよ」
「そんな事があったんスか…」
スマイルは過去の事を一通り話してくれた。
「その後からかなぁ〜。ユーリが人の寝顔を見れなくなったのは…」


§ § §

その後も暫くは各地を転々と渡り歩いていた。
ある日、宿がなかなかとれなくて…
結局一人部屋しか取れなかった。
ユーリを初めて抱いた夜だった。
一通り事を終えて、ボクもユーリも一つのベッドに一緒に寝ていた。

真夜中だったかな。
確か満月が近くて、部屋の電気を消していても、部屋の中は蒼く淡く輝いていた。
「ん…ユーリ、どうしたの??」
目が覚めたと同時に視界に入ってきたのは、泣きながらボクをじっと見つめるユーリの姿だった。
気絶して、そのまま寝てしまったと思ったのに…
「ユーリ!!?どっか、痛む??」
ボクは起き上がり、ユーリに尋ねる。
ユーリは首を横に振った。
「じゃあ、どうしたの??」
と問う。
「スマが…マリアみたいに…もぅ…目覚めないかと…怖く…なっ…て…」
声が掠れていた。
小刻に震えている。
ボクはユーリを抱き締めた。
「大丈夫…。大丈夫だよ」
そう言ってやっても…
その日、ユーリが泣きやむ事は無かった…。


§ § §

「だからね、ボク決めたんだ。なるべくユーリより早く起きようってね」
話を聞き終えてオレは急いでユーリの部屋に行った。
そういえば、思い当たる節がある。

オレが寝てて、ユーリが隣にいる。
寝たふりして暫く見ていたら、オレの懐に潜り込んできた。
可愛いな〜とか思っていたら
「生きてるよ…な??」
と寂しげに呟いたのだ。


なんで気付いてやれなかった??
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