呪われた人々

□僕の居場所…(†+‡)
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【暗闇から伸ばされた小さな手】


「買い物に付き合わせて悪かったな」
「いいわよ別に。私も欲しいモノあったし」
食料の買い出しに、サキュバスと街に出たのはつい2時間前だろうか。
日が山に落ちて間もなく、空は菫色をし、先程まで空と同化していた半月が淡く輝き出した。
「そろそろあの子が元気な時間帯ね」
「ヨアヒムだけではないだろう」
「あら、魔物に夜はつきものよ?レオン」
深い溜め息を一つ…。
どうしてサキュバスまで一緒に引き取ってしまったんだか…。
でもまぁ、ヨアヒムの事を一番知っているのは、今ではサキュバス位だろう。
「まぁ、仕方ないか…」
「何が??」
思った事が思わず出てしまった。
「いや…何でもない。それより、随分とかかったが…ヨアヒムは大丈夫だろうか」
「大丈夫よ。あの子待つ事には慣れているから」
「それも可哀想だと思うがな」
あの暗い水牢で、一体どれだけの日々を彼は過ごしていたのだろうか。
助けを求め、どれだけ手を伸ばしたのだろうか…
そう考えただけで、歩く速さは自然と速くなる。
「早く帰らなければ…」
「ちょ…ちょっと…待ちなさいよ…」
サキュバスはしまっていた翼を広げ、飛ぶ。

†*†*†*

「ただいま」
玄関の扉を開けながら言う。
何時もならヨアヒムが『おかえり』と笑顔で出迎えてくれるのだが…。
「あら、あの子寝てるのかしら」
「本を読み耽ってるのではないか?読書するのをちょくちょく見掛けてるが…」
「それだったらすぐ気付くわよ…。あの子寂しがり屋だから。ちょっと様子見てくる」
そう言って、部屋に向かう。
その間、キッチンに向かい、買ってきた荷を下ろす。
「良かった。潰れてないな」
デザート用に買ってきたチョコケーキを取り出す。
あの甘いものを食べている時の笑顔が微笑ましくて仕方ない。
「喜んでくれるだろうか…」
そう呟いた時…
「ちょっと、レオン来て!!」
サキュバスが血相変えてやってきた。
「どうした?」
「ヨアヒムの様子がおかしいのよ」
「!!?」
急いで部屋に向かう。
「ヨアヒム!!」
部屋に入ると、ベッドの前に蹲っていた。
「ヨアヒム、どうしたんだ??」
問い掛けても、ただただ震えてるだけで…
「何度問い掛けてもそんな状態なのよ…」
「…すまない。少し席を外してくれ…」
「分かったわ…」
サキュバスは渋々と部屋から出ていく。
「ヨアヒム、私が分かるか??」
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