呪われた人々

□ルドベキア(♪+†)
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槍を構えた悪魔は、俺の後で戦闘体勢を取っていた。
「この子は…貴方と同じだわ」
そう言って彼女はそっとカインを撫でた。
カインは、嬉しそうな表情を浮かべ、首を擦り寄せる。
「俺と??」
「えぇ…。心を開かない様に見えて…実は寂しがり屋。優しい子。まぁ、その点はヘクターよりカインの方が素直ね」
彼女はクスクス笑う。
「……優しくなんかない……。俺は……悪魔だ……」
そうだ…
平穏を望んだばっかりに
愛しい人の命を奪った…。
「俺は…平穏を望んではいけなかった…。城を出た時…素直に殺されていれば…」
「あまり自分を責めないで。私も平穏を望んだわ。私も兄さんも魔女の血が流れてるもの。兄さんは…道を間違えただけ…。ヘクター、いてくれてありがとう」

─在てくれて、ありがとうヘクター─

「…ジュリアで二人目だ…。こんな…俺に…そんな事を言ったのは……」

ひだまりの中の…
光の中の笑顔を守りたかった…
安らげる場所が一番欲しかった…。

「ジュリア…」
「ヘクター…お願い…。もぅ…無茶をしないで」
「泣いてるのか…??」
寄り添ってきた彼女の頬を、涙が音もなく走っている。
俺はそれを、そっと拭う。
「私だって…寂しいのよ…。貴方がいなくなったら…って考えると、とても怖いの。だって…貴方は…兄さんと同じで…無茶ばっかりするんだから…」
「…悪かったジュリア…。悪かった……」

それだけしか、言葉が出てこなかった。

一度は捨てた闇の力…
平穏を求めて捨てた力…
それ故に愛しい人の命を奪われた。
そして、再び戻ってきた力。
もう二度とこの力を捨ててなるものか。
この女性<ヒト>を失ってなるものか…。

窓の外を見ると、沢山のルドベキアの花が風で揺れていた。

END...
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