駄文2

□茜にベルを鳴らして
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オレンジのせつない色は、今日という日にさよなら告げる


そしてオイラは、あの日交わした約束にさよならをする

さよならを、しなくちゃいけない
どうしても―…



茜にベルを鳴らして




強い光を携えたアンナの瞳は、
真っすぐオイラを見ている

オイラの心をまるで透かしているかの様に、見据えている


足元の草がさわさわと風に揺れる音だけが聞こえる

穏やかで、とてもこの島で殺しあいが行なわれているとは思えない


捨てたはずのオラクルベルは今、
オイラの手の中にある


オイラはまた、こいつをつけて戦いたい


例え辛くても、
今までの日々も約束も、
捨てたくない

そんな本心には、さっき気付いたばかりだ




「戦いが嫌なら、
最初から逃げてしまえばよかったのよ」


向かい合って立って、しばし沈黙が続いたが、
ふいにアンナが口を開いた

ずいぶん突き放した言い方だ

…やっぱり怒ってるんか?

「シルバに会った時に、参加試験なんて受けなければよかった」

「そうすれば、戦わずに済んだのに」


アンナは視線をそらさずただ淡々と言い放つ


―…オイラはあの時、ここで逃げるよりなら死んだ方がマシって思った

今も、戦いに悩む日も、それを後悔した事はない


「あんたは、オラクルベルを手に入れた
あの時も、そして今も」

「戦う意志が、あるって事ね?」


「――ああ」

オイラは今、アンナに心を確かめられている
それを感じ取り、ハッキリとした口調で肯定した


「なら、
メイデンとの約束なんて理由にならない」

「まだ戦いたいのなら、
悔いがあるのなら、
あらがえばいいのよ」

「なんとかなる、でしょ?」


「…そうだな」


アンナの言葉にそう答えると、自然と笑みがこぼれてきた

ああ、こんな風に笑うのは久しぶりな気がする


「アンナ、拾ってくれてありがとな」


「…やっといつもの葉ね」

そう言ってアンナも少しだけ頬笑む


さっきよりも夕焼け空が、景色が、鮮やかに見える気がする
風がとても気持ちいい



どちらからともなく歩を進めて、
アンナがオイラの肩に顔をよせる

オイラはアンナの小さな背中に手を添えた


「葉、あたしを救ってくれるキングは、あんたしかいない。
あたしはシャーマンキングの妻になる女、
あたしの居場所、ここで間違ってないわよね?」


「ああ、必ず叶える。
だからアンナはずっとここにいてくれればいいんよ」



瞳に互いを映して、
唇を重ねる―…




オレンジのせつない色は、今日という日にさよなら告げる

そしてオイラは、つっかえていた悔いにさよならを言う決意をする


もう大丈夫だ。


どこにも行かせない、と強くアンナを抱きしめて、
オイラはオレンジの道を真っすぐに駆け出した


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