戦国BASARA

□特効薬
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『なかなかうまそうじゃねーか』

幸村の忍びである猿飛にもらったレシピと睨めっこしながらしゃもじを手に取る。

出来上がった粥はなかなかいい出来だ。

なぜ俺が粥を作っているかというと、小十郎が突然風邪をひいたからだ。

いつもなら家臣が居るのだが今日はたまたま出払っていて俺が看病するしかない。

料理なんていつもは小十郎がしてくれるからやったことがなかったが何とかなるものだ。


(結構面白いんだな)

またやってみるのも悪くない。


そんなことを考えながら粥の入った土鍋を鍋式を敷いた盆に乗せる。

(きっとあいつ喜ぶぞ)

感涙でもしそうな小十郎を想像すると食べさせるのが楽しみになっていた。





『小十郎入るぜ』

「ゴホゴホ、政…宗様?」

襖を開けると咳をしながら小十郎は布団から体を起こす。

『ったく大丈夫かよ』

「大したことはございませぬ。それよりこんな所に居ては政宗様も風邪を召されますぞ」

『…俺のことより自分の心配しろよ』

小十郎は誰が見ても辛そうで、普通だったら他人の心配などできないだろう。

でもこいつはいつも自分より俺の心配をする、あまり自分に無頓着なのも考え物だ。

「そういえばそろそろ昼時ですな。簡単なものでしたら…」

『いらねぇよ。俺が作ったからな』

「え?」

俺は自分の後ろに置いておいた土鍋の乗った盆を小十郎に差し出す。

「……………」

しかし小十郎は食べようとせずただ土鍋を眺めている。

『どうしたんだよ。食わねぇのか』

「すみません。政宗様が自分の為に料理を作ってくださるとは思ってもみなかったので嬉しくて…ありがとうございます」

『べ、別に…俺だって料理くらいするさ』

あまりにストレートな感謝の言葉に思わず素っ気ない返事をしてしまう。

『ほら早く食えよ、冷めちまうだろ』

「はい、それではいただきます」

小十郎は蓮華に粥をすくって口へと運ぶ。

自分で作ったせいかなんだか緊張してしまう。

『どうだ?』

「とてもおいしいです、政宗様」

満面の笑みでそう言われると照れくさい気持ちになってしまう。

(でも喜んでくれてよかった…)

たまにはこんなこともしてみるものだとしみじみ思う。





それから小十郎はおいしそうに粥を食べていく。

(美味そうに食ってるな…)

味見をしなかったのでどんな味か気になってしまう。

『そんなに美味いんなら俺にも食わせろよ』

小十郎から蓮華を奪って自分の口に入れる。

「政宗様!俺の使った物を口に含んでは風邪がうつってしまいます」


『!!』


「…政宗様?」














不味い















米は硬いし味はしない。

こんな不味い粥は初めてだ。

(こんなのをこいつは食ってたのか!?)

小十郎の手料理はとても美味い。

だから味オンチというわけではない。

ということは…


『おい小十郎!こんな不味いもんもう食わなくていい!!なんで言わなかったんだ』

恥ずかしくて死んでしまいそうだ。

味見もしないで自信満々に持ってきて…

それでも本当に美味そうに食っていたから不味いなんて想像してなかった。

さすがに小十郎が俺に面と向かって“不味い”とは言えなかったのだろう。

「不味くなんかありません。とてもおいしいですよ?」

『嘘吐くんじゃねぇよ。これのどこが美味いんだよ!』

「おいしいですよ。政宗様が作ってくださったものですから」


『!!!!!…おまえなぁ』


反論しようとした瞬間体を引き寄せられ、きつく抱き締められる。

『こ、小十郎!?』

「本当にありがとうございます。俺は幸せ者です」



(全く…こいつには敵わない)



『もし…』

「?」

『もし俺が風邪引いたら…ちゃんと看病しろよ』

「はい、もちろんです」


抱き締めてくる小十郎の体が熱くて溶けてしまいそうだった。












『喉が痛ぇ…』

「政宗様、薬と粥を持って来ましたぞ」

その後小十郎以上にひどい風邪を引き、献身的な看病をうけた政宗であった。

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