戦国BASARA
□雨の日
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『降ってきちまったな』
「降ってきましたな」
幸村と団子屋で団子を食べて店を出ようとした瞬間、狙ったように雨が降ってきた。
来たときはいい天気だったのに今はひどい土砂降りだ。
雨の勢いは弱くなるどころか強くなる一方で…
「困りましたな」
『…そうだな』
止みそうにない雨を二人でぼうっと眺める。
幸村は困っているようだが俺は内心困ってはいなかった。
(ありがとう!小十郎!!!)
俺は朝、小十郎に傘を渡されれていた。
過保護なところに嫌気がさした時もあったが、今日のことは心から感謝した。
なぜなら…
(この状況なら自然に相合い傘をできる!)
そう思ったからだ。
恋人同士でなければする機会などないだろう相合い傘ができるというのは、俺にとって飛び上がるほど嬉しいものだ。
善は急げ!とばかりに隠すように持っていた傘を取り出す。
『なあ…』
「なんでござるか?」
無垢な瞳で見つめられると、下心ありありの自分が汚く思えたが思い切って言葉を紡いだ。
『傘…あるんだけどさ。よかったらその…一緒に入るか?』
恐る恐る伝えた言葉に幸村は
「おお、流石政宗殿!かたじけない」
予想外のさっぱりさ加減で…
(ムードもへったくれもねぇ!)
恥らうとか照れるとかそんな反応を若干期待していたので思わず拍子抜けしてしまう。
『まあ…こんなもんか』
思わずそんな言葉が漏れた。
「なにか言いましたか?」
俺の心情など全く気付かずに幸村は無邪気に傘に入ってくる。
『…いや、なんでもない』
(でもこいつのこんなところが好きなんだからしょうがねぇよな)
肩が触れ合う傘の中で、この雨がずっと止まないことを願った。