脳内世界を組み立てろ!!

□囚×人
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囲いの中から出れない束縛された存在"囚"。
囲いの外にいる囚を管理する存在"人"。

その2人が恋をすることを"囚人"と言うこの世界。
囚であれ人であれ、自由ではないこの世界を"檻"と呼んだ。



×




じゃら、じゃら。
金属の音が、絶え間なく狭くて暗い部屋"囲い"に響く。
首に、腕に、足に付けられた鎖が当たり、またじゃら、じゃら。
この音がようやく日常のものであると感じ始めてきたこの頃。


「外は、どうなってるだろう」




ちゃら、ちゃら。
無数の小さな金属の音が、絶え間なく繁華街に響く。
首や腕、ポケットやバッグに付けられている鍵が揺れ、またちゃら、ちゃら。
未だにこの音が慣れないこの頃。


「中は、どうなってるだろう」




鎖や部屋に囚われている囚は逃れられない。
元は人であった囚は、何らかの罪を犯したことにより、囚となった。
その囚を捕えている鍵を持っている人は、好きな時囚を出し、好きなことをしても良いことになっている。

そんな世界が信じられない。

囚だって、何か理由があったにしろ元は人だった。
私だって、いつ囚になるかもわからないのに。

手に握っていた鍵を見つめる。
今日、渡された鍵。
それを見つめ、持っている手を振り上げた。
投げ捨てようとした、今朝言われたことが頭を過ったからだ。



『好きなことをしても良いんだよ、羨ましいね』

『私はまだ貰っていないから羨ましいな。早く欲しいな』



ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!
こんな世界壊れてる、どうにかしてる!!
これが普通だなんて、違う!!

振り上げた腕を下ろした。
捨てたって誰かが拾って、この鍵に彫られている部屋番号の囚を虐待するに決まっている。

せめて、私に託された囚だけは救ってあげるんだ。
もう一度握りしめ、歩き出した。




「あの、トラン・トゥルフェインです。新しく鍵に選ばれた主です。ご確認ください」


囚が囚われている全ての囲いの管理人に私の持っていた鍵を渡した。
その鍵を手に取り、見てから今度は私の顔をじっと見る。
ここ最近、この鍵をコピーしている奴がいた。
そのコピーしているしていないのを確かめるのがこの管理人だ。

どうして、そこまでしてこんなものを手に入れようとするのだろう?
私には、とうていわからない。

ぼんやりと考えていると、管理人が鍵を差し出した。


「確認した。正確な主として認める。今後は確認を得ずとも入ることを許可しよう。お前の囚はあっちの部屋の奥だ」


鍵を受け取ってから管理人の言っていた方へ向かう。
向かう途中にたくさんの囲いがあった。
その囲いの前を通りすぎようとしたその時。




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