BOND OF HOPE

□嘲笑、無力な自分
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電気も点けていないのに薄暗い部屋。
ベッドから転がって降りる。
全身を見ることのできる鏡の前に立ってみてから自分の手のひらを広げて眺めてみた。

生きてる。
ボクは、生きてる。

不意に窓の方に顔を向けると、空にある無数の光が横へと流れて消えていくのが見えた。
あれは流れ星ではないか。
今から眠れる気もしないし、外に行って眺めてこよう。
気分転換にもなるかもしれない。

(ボクが星空なんて、似合わないな)

そんなことをぼんやりと考えてからいつもの速度で歩き出した。







山頂へと来てみるとヴェントゥスが寝転がっていた。
覗き込んでみなくともわかる、彼は寝ている。
少し寒いと言うのに、ヴェントゥスが風邪を引いたってボクには関係ないのだが。
背後から足音。
誰にも見つかりたくないと思ったボクは咄嗟に高台へと登ってボクも寝転がる。
聞こえてきたのはヴェントゥスともう一人、アクアの声。
あともう一人集まれば仲良しトリオの集会になってしまう。
大きく息を吸い込む。
流れていく、キラキラ流れ星。
もしも願い事を三度唱えるならば。

(ボクはどんなことを願うのだろう?)

そっと瞼を閉じれば見えるのは闇だけ。
ボクの体を包む黒と紫。
闇の力。

ハッと目を開けて上半身を起こした。
下を見てみると、いつの間にかテラも一緒にいて結局仲良しトリオの集会になってしまったらしい。
ボクは高台から足を出して足をぶらぶら垂らしながら三人を観察。


「そうだ、明日はテラと私のマスター承認試験でしょ」


そういえばそうだ。
マスター・エラクゥスが来い来いとしつこかったのを今思い出した。
どちらがマスターに選ばれるか、気になるような気もしなくもないが。

(行っても何の得もないな…)

明日は寝て過ごそうか。
そんなことを考えながら自分の足に肘を乗せて頬杖をつく。
アクアは自分の懐を漁ったかと思えば、三つ色違いの星形のものを取り出した。


「お守り作ってきたの」


何とも可愛らしい。
是非とも欲しいところだが、貰う権利も何もボクはない。
元々あの三人とは接点があまりない。
ボクがあの三人の友情やら絆やらに付いていけなくて距離を置いているだけなんだが。
アクアはひょいとテラに投げヴェントゥスに投げ、投げられた二人は上手く受け取っていた。


「俺にもくれるの」


「もちろん、みんなおそろいよ」


そう言ってアクアが作ったお守りをみんなで見合わせる。
あの中にボクも入っていたなら。
なんてありもしないことを考えながら、ボクはまた後ろに倒れ込んだ。
自分の腕を枕にして満天の空を見上げる。


「世界のどこかに星形の実をつける木があって、その実はつながりの契りになるんだって。そして、その実を貝殻で模したお守りを持っていると、たとえ離ればなれになったとしても必ず再会できるらしいの。まぁ、本物の材料は手に入らないからそれっぽく作ってみただけなんだけどね」


「そういうとこは女の子なんだな」


茶化すテラにアクアは反論。
クスクスと聞こえたテラの笑い声と、思い浮かぶアクアの膨れっ面。
そんな中、ヴェントゥスの不安そうな声にボクは体を起き上がらせる。


「本物じゃないと効果ないの?」


「んー、効果はまだわからないんだけど、魔法をかけておいたよ」


ヴェントゥスは目を輝かせながら「え」と声を漏らした。
「どんな?」と問いかけるヴェントゥスにさも当たり前のような笑みを見せたアクアはさっきのお守りを空高く掲げる。
まるで、星空に見せるような、そんな風に。


「つながり、だよ」


ボクは空を仰いだ。
つながり、なんて。
そんな脆く儚いもの、ボクは要らない、必要ない。
ボクが必要なのは強さだけ。
全てを手に入れられるほどの、強さだけ。

ボクは立ち上がる。
流れていく星に、ボクは目を閉じた。
"強さが欲しい"とただそれだけのはずなのに。



ボクは、三度も唱えられなかった。




To be continued
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