脳内世界を組み立てろ!!

□アリスとジャックの物語
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憂鬱そうにしていた授業も終わり、腕を伸ばしている亞犂雛。
てきぱきとカバンに物(と言っても持ってきているものは筆箱とカモフラージュ用のノートだけだが)を詰めていく。
嬉しそうに教室を駆け足で出ていく亞犂雛はある場所へと向かっていた。


小さな本屋さんだ。


ドアを開けるとチリンと小さな鈴が鳴る。
薄暗い本屋さんのカウンターには誰もいない。
だからこそ亞犂雛はここに毎日来ていた。
その理由とは……、


「昨日良い本見つけたんだよねぇ。他の本屋は立ち読み禁止だけどここはいくら立ち読みしたって怒られないもんね」


だからである。
つまり、ここで毎日立ち読みをしている亞犂雛にとってここは天国と呼べるであろう。


昨日も立ち寄った亞犂雛は良い本を見付けたらしい。
その辺にあったはしごを使って高いところの本を手に取る。


「これこれ、見付けた」


はしごから落ちないように降り、本棚を背にして座ってからその本を眺める。
タイトルは"アリスとジャックの物語"。
そのタイトルに興味を持った亞犂雛は今日読もうと思い、ワクワクしながら昨日は退散したのだ。


「どんな話なのかなぁ、楽しみぃ」


そう呟きながら本に手をかける。


─────その瞬間。


『ようこそ、私達のアリス』


その言葉が頭の中に流れ込んできたのと同時に強風が亞犂雛を包む。
本のページが1ページ開かれた。
その本から腕が出てきて亞犂雛の腕を掴む。
抵抗する暇もなく、亞犂雛は本の中へ引きずり込まれていった。


「んぎゃぁぁぁああああああ!!??」


すっとんきょうな叫び声だけを残して亞犂雛は本の世界へ消えた。
支えてくれるものを無くした本はドサリと音をたてて虚しく落ちた。







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