脳内世界を組み立てろ!!

□囚×人
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バシィィンッッ

囲いの中から何かが何かを叩くような音がした。
その音に、私の肩が跳ねる。
そして立ち止まった。


「うあぁぁぁっ!!やめてっ、やめてくださいっ!!…っうぁぁ!!!!」


「うるさいわねぇ、黙りなさいよ!!!!」


再び響いた叩く音。
足が、貼り付いてしまったかのように動かない。
震える唇、肩、足。
無理矢理足を動かして駆けた。
駆けても駆けても、全ての囲いから聞こえてくる叫び声、悲鳴。
耳を塞いでも聞こえてくる。

やめて、やめて…!!

気付けば私は鍵に彫られている部屋番号と同じ部屋番号のドアの前に立っていた。
鍵を開けることを躊躇ってしまう。
ふと、考えてしまったからだ。

私もいつかはあぁなってしまう?
囚を虐めてしまう?

鍵を持つ手が震えた。
唇を噛み、両手で鍵を持つ。

私はあんなことはしない。
この囲いの中にいる囚は救うと決めたのだ。
覚悟を決めろ!!

鍵穴に鍵を差し込み、開けた。
ドアを開けて中に入る。
古ぼけた臭いがして、光の差さない囲い。
前を見てみると、目を見張った。

そこには、美しいブロンドに澄んだ青の瞳を持った私より少し歳上のような青年。


「……あ」


青年が恐る恐る出した声に我に返ると、ビクリと跳ねた青年の体。
虐待されると思っているのだろう、部屋の隅で防御体制のようなことをしている。
隅と言っても、あまり長いとも言えない鎖の長さでは限界があるが。


「えっと…、怯えないで?私は貴方を虐めたりなんかしないから」


そう言いながら近寄ると、過剰に反応するなり私から離れて首を横に激しく振る。
頭を抱えて丸まってしまった青年。
その青年に歩み寄り、隣に座ると体を震えさせてしまった。


「大丈夫、大丈夫。私は貴方を虐めたりなんかしないって。本当だよ?」


青年を包み込むように抱き締めると、青年は落ち着いてくれた。
青年は未だ少し怯えたような瞳で私を見つめる。

本当?

小さな小さな声で呟いた青年の頭を優しく撫でながら「本当だよ」と囁いた。
安心したのか私の背中に腕を回してきた、子供みたいに。
ゆっくりと離れると、青年は完全ではないが怯えていなくて安心する。


「私はトラン・トゥルフェイン。貴方は?」


私の質問に首を横に振った。


「僕…には、名前……無い」


「……あ…」


そうだ、囚には名前が無いのだ。
いや、必要じゃないのだ。
虐待するための道具に名前なんて必要ない。
改めて、この青年が私に怯えた理由がわかった。


「じゃあ、私が付けてあげる!!」


「……え?」




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