脳内世界を組み立てろ!!

□Chain
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桜、と言えば何を思い浮かべるだろうか。
花見、酒、団子等々。
思い浮かべるものはたくさんあるであろうが、ここではこう考えてもらおう。


桜=入学式


満開の桜に迎えられ、様々な大きさの生徒がこの学園にぞろぞろ集まる。

廉潔(れんけつ)学園。

廉潔と名が付くにも関わらず、ここの生徒はだらしない。
ガム、制服改造、校則違反、無断欠席、喧嘩、警察沙汰は当たり前。
すっかり印象の悪くなってしまった廉潔学園。


その校門に一人。
皆の視線をモロに受けてもなお、口元に浮いている笑み。
大きく息を鼻で吸って、大きな校舎を仰ぎ見る。


「…ここが廉潔学園、か」


腰に手を当てて、呟いた。
その声は声変わりが済んでいないのか高い。
それもそのはず、その子はまだ“子供”だ。
更に、背がまだまだ小さい。ぱっと見、まだ小学校三年生位の大きさだ。


「よォ。今日も晴天だな。入学式には持って来いの日だ。そう思わねェか?」


目付きの悪いつり目、悪魔を連想させるような歪められた口。
それを全部嘘かと思わせる天使の笑顔、またの名をエンジェルスマイルを通りがかりの柄の悪い男子生徒に向けて挨拶をした少年。
あまりにも見事なエンジェルスマイルを見せられた男子生徒はたじろぎ「あ、あぁ」と頷いた。


「ほら、早く行かねェと遅刻するぞ」


と、先程よりレベルの上がったエンジェルスマイルで言った。
男子生徒は混乱しているのか、玄関に向かって走りながら何度も何度も振り返ってくる。
それを見送って、エンジェルスマイルを止めた少年は玄関へ──向かわずに歩き出した。

すると、少年の前に現れた大きな影。
この学園の職員だろうか、少年を見下ろしていた。


「どこに行く気ですか?もう少しで式が始まりますよ。早く校内に入りなさい」


その職員に、少年は。



笑った。



初めは「ケケケ」とか「ククク」とか抑えるような笑い声だった少年は、ついには腹を抱えて笑い出したのだ。
わけがわからないのか、職員は固まった後に眉を思い切り吊り上げた。


「…あなた、何様ですかっ!?早く初等部の校舎に──」

「うるせェよ」


この辺りの気温が−5度は下がった気がする。
これは正しく、顔は笑っているがという感じだ。
それは無言の圧力。


「まさか…、あなた様が…?」


「よォやく気付いたかよ、遅ェっつの」


頭を掻きながら「ま、いいけどよ」と呟いたことに、さっきと態度をすっかり変えた職員が安堵のため息をついた。


「あんた、運が良いなァ。俺様の機嫌が良いときに会ってよォ。もし少しでも機嫌悪かったら、もうこの世界からおさらばしてるぜ?」


そう言ってケラケラ笑った少年。
少年を見て恐れたか狂ってるとか思ったのか、職員が怯え始める。


「ま、どォでもいいけどよォ。とりあえず、俺様を案内しろ。それが、あんたの今の仕事だぜェ?」

「は、はいっ。こちらです」


急に大人しくなってしまった職員を滑稽に思ったのか腕を後ろ頭で組んで「ケケケ」と笑った。
背を向けた職員の後ろを無言で付いていく少年。




入学式はもう少しだ。




生徒会編




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