籠球裏の書
□第4Q
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「…………まこっちゃん…」
スズは幼少の頃に花宮と二人で撮った写真を見た。
そこには満面の笑みで写るスズと、少し頬を赤らめ嫌そうにしているも小さくピースをした花宮がいた。
「……」
コンコン
ガチャリ
木「スズ、もうすぐ時間だぞ。忘れ物無いな?」
「うん、大丈夫…」
そう言って写真を制服のポケットに突っ込み荷物を持った。
「お兄ちゃん……絶対、勝ってね…!」
木「…あぁ!」
〜第4Q〜
「すっごい人……」
試合会場へとやってきた誠凛バスケ部、そこには多くの人で溢れかえっていた。
カ「ほらほら、呑気に見物してる暇無いわよスズ!あんた達は更衣室で先に着替えてきて、私たちは受け付けの方に行ってくるからね。」
日「わかった、それじゃあまた後でな。」
木「リコからはぐれるなよ?」
「わ、分かってるって!」
スズとカントクはエントリーするべく受け付けの方へと足を運んでいった。
カ「……よし、これで受け付け完了ね。」
「………ふぅ…あ…」
カ「ん?あ…」
受け付けを済ませた二人がふと隣を見ると、霧崎第一も同じように受け付けをしていた。
そこには当然花宮真の姿もあった。
花「あれ?誰かと思えば誠凛のカントクさんですよね。」
表向きの爽やかな笑みをカントクに向ける花宮。
カ「どうも…なんて挨拶野暮よね。貴方が去年鉄平にしたこと、忘れたとは言わせないわよ。」
花「へェ…」
妖しい笑みを浮かべ、チラリとスズの方を見る。
花「知らね、アイツが勝手に怪我しただけだろ。」
カ「あんたねェ…!」
「カントク!!!!…今は耐えて下さい…。」
そういって彼女はカントクの制服の裾を引っ張り、目で訴えた。
カ「スズ……ごめん、ついカッとなっちゃわね。」
「あ、いえ…」
花「じゃあ精々お互い頑張ろーよ。……試合中、何も無かったら良いけど…」
意味深な言葉を置いて、行ってしまった。
遠ざかる彼の背中を見つめながら下唇を噛み締めた。
カ「全く…ほんと嫌な奴ねアイツ!!」
「カントク……」
カ「ん?どうしたのよスズ 、さっきから元気無い…のは当たり前よね。」
「…あの…後で皆さんに大事な事を伝えたいんですが、少しお時間貰えないですか?」
カ「……え?」
バタンッ
カ「受け付け済んできたわ!」
日「おー、ありがとカントク。つか、遅かったなァ。」
カ「ちょっとね。それより皆、これからコートに行く前に少しスズから話しがあるみたい。」
木「………」
伊「今話すってことは、相当重要なんだな?」
「…はい…。」
火「話しってなんだよスズ。」
「…まず、皆さんには知っておいて欲しい事があるんです。………霧崎第一にいる花宮真…彼は私の幼少の頃からの幼馴染みなんです…!」
火「………え…」
全「えええええぇ!!!!?」
スズの告白に木吉兄妹以外全員が驚いた声を上げる。
カ「えっ、ちょ…あなたとあの花宮くんがお、おさ…幼馴染み!?」
日「お、おち、落ち着けカントク!俺らもイマイチ状況が把握しきれねぇ!」
彼らがこんなにも混乱するのは、二人の性格が全く正反対であること。
そのことを考えれば二人が幼馴染みなど誰が予想したか。
小「もしかして、木吉はこの事知ってたのか!」
木「いや、俺も昨日聞かされたぞ!」
爽やかな笑みで断言する彼に小金井達もげっそりする。
カ「あんたら兄妹はほんとにお互いのこと知らな過ぎなんだから…!で、それを聞かせてどうしたかったの?」
「…昨日、久し振りにまこっちゃ…真くんと逢いました。ですが…そこには昔の彼は居ませんでした。」
悲しそうな表情を浮かべながら、昨日の出来事を話す。
木「………」
「元々あまり素直な子じゃ無かったし、バスケに対して少し不誠実なとこはありました。…だけど、それでも彼は私が認めた数少ない選手なんです…!」
花『スズ、バスケやろう!』
スズの脳裏に幼少の頃の花宮の姿が浮かんだ。
「もう…今の彼にはラフプレーをすることが当たり前だと思ってる…それは止められなくて本当に申し訳ないと思ってます…。」
ふと目尻に涙を貯めるスズ。
木「スズ…」
「だから、ラフプレーで今まで勝ってきた彼にはもう一度…努力で磨いてきたバスケで負い巻かしたいんです…!!」
強い眼差しを部員に向ける。
「そうすれば…少しでもいい、何かが彼を動かすきっかけになってくれたら良いんです…。」
最終俯いて瞬きをすると、床にぽとりと涙のしずくが落ちた。
「すみません、長々と…話しは以上です…」
火「……まぁ、端っからやることは一つだったが…お陰で気も更に引き締まったぜ。」
黒「そうですね。…スズさん…泣かないで、最後まで僕らの応援頼みます。」
そういって黒子はそっと優しく彼女にハンカチを渡した。
「…ありがとう…火神くん、黒子くん…!」
日「…よし、なら準備は良いかお前ら。」
全「ウッス!!」
木「スズ…ベンチで見守っててくれるか。」
「…うん…もちろんだよお兄ちゃん…!」
ここでようやく彼女は笑顔を見せることが出来たのだった。
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