籠球裏の書

□第9Q
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「…ふあぁ〜…よく寝たかなぁ」


朝、目を覚ましたスズは未だ隣で寝ている花宮の顔を見た。


花「……ン…」


小さく声を漏らしもぞもぞと身動きする花宮に思わず口を手で塞ぐ。


「かっ、かわいい…!!なんて可愛さなのまこっちゃん…!犯罪級だよもう…。」


天使かと思うような彼の寝顔にしばらく見惚れていた。








花「おい、いつまで見てんだ変態。」


パチリと目を開けこちらをギロリと睨んだ花宮と目があった。


「えっ?まこっちゃ…!おわっ!!



ドシーン


不意打ちだったため驚いてベッドから落ちてしまったスズ。


「いった〜…ちょっとまこっちゃん、驚かさないでよー。」


痛そうにお尻を擦りながら立ち上がる。


花「ふは、そんなにオレの寝顔が可愛いかったのかよ。」


「あ、聞こえてたの?でも本当に可愛いかったよ。もう襲いたいぐらい。」


花「ありがとうスズ、可愛いなんてそんな事言われたら照れる…な訳ねーだろ。いい加減顔洗って飯作れ。涎のあと付いてんぞ。」

「そういうまこっちゃんは目ヤニ付いて…」


花「……」


「あっ、いってきまーす。」


花宮の無言の圧力に圧倒されスズは早々に部屋から出た。





























〜第9Q〜
































ガチガチ





一階に降りると身仕度を整えたスズが朝飯を作っていた。



「あ、まこっちゃんもうちょっと待ってて。」


花「お前相変わらず卵料理しか作れねーのかよ。」


スズが作っているものは玉子焼き。


「うん、なんか卵じゃないと上手く作れないっていうか…」


花「はぁ、別に良いけど…。飯食ったら家帰れよ。」


「分かってるって……お?」


するとポケットにいれていた携帯が振動した。


見てみるとメールを一件受信していた。







ーーーーーーーー

from お兄ちゃん

件名 すまん!!
ーーーーー

今日と明日、こっちで合宿する事になった。リコの提案でな、近くの体育館使ってやるらしい。

じいちゃんとばあちゃんには電話で伝えておく。


くれぐれもオレの見てないところで無茶はするなよ。それじゃあ。


ーーーーーーーー






そのメールを一通り見終わったスズ。



携帯を一旦閉じ一息つき、


まこっちゃぁぁああん!!!どぉぉしよぉぉお!!!


花「Σんなっ!なんだよ急に…!?」


涙目で花宮に縋るように迫るスズに彼は恐ろしいものを見る目で見つめる。



「お兄ちゃんがっ……お兄ちゃんがぁぁぁ!!!


花「……は?」


























花「ふーん…それで、今日帰ってくる予定だったのにちゃっかり向こうで練習かよ。ふはっ、抜け目ねぇなぁアッチのカントクは。」


「流石過ぎて涙出ちゃうよ…」


二人で朝飯を食べながらスズは花宮に事を話した。


グスッと涙目になりながら自作の玉子焼きをぱくりと食べる。


花「まぁ、そんな事オレには関係ねーけど。」


「えっ、まこっちゃん泊めてくれないの!?」


花「誰が泊めるかバァカ!!いい加減両親帰ってくるっつうの。」


「うー……それじゃあ、今日一日だけでいいから私に付き合ってよまこっちゃん!どうせ今日は部活も休みだし…」


花「そうだけど…」

「お願い…!!」

花「…うっ」


スズにじっと見つめられ、いつもならここで一喝するが彼女の必死な訴えにそれは出来なかった。


花「はぁ……付き合うって何すんだよ。」


「うんとね、色々とまわって買い物しようかなって。」


花「買い物なら原とか山崎達としろよ。」


「原ちゃん達とも買い物したいけど…まだそんなに仲良くないから…」


花「…あー、たくっ…面倒くせぇなぁ。」


後頭部をガシガシと掻いて渋々了承した。


「ありがとうまこっちゃん!やっぱりまこっちゃんは優しいね。」


花「うるせぇよ、食ったらさっさと食器片付けろ。」


「はぁーい!」


ルンルンと嬉しそうに食器を下げてスズは鼻歌まじりになって仕度をする。





































弘「おい原ァ、オレはせっかくの休みを家でゆっくり過ごしてぇんだけど…。」


くぁっと大きな欠伸をしながら原の後ろをついて行く山崎。


原「せっかくの休みだから、出掛けるのが良いんだろ?ザキ分かってねーなァ。」


大方原も買い物をしようとし、山崎はそれに巻き込まれたようだ。



原「そろそろオレのバッシュ買い替えてぇなぁって思うんだけど…」


弘「あぁ、お前のバッシュなァ。結構汚くなってたもんな。あれいつ頃履いてたんだ。」

原「んー…確か花宮がキャプテンになってからだと思うんだけど。」


弘「あー……ん?なぁ、あそこ誰かいねぇか?」


スポーツ品店の前に見知った誰かを見つけた。



弘「あれ…花宮とスズじゃねぇか。なにして…」


原「ちょっとストップザキ!」


弘「ぅおっ!


二人を見かけた山崎は声をかけようとしたが、それは原によってことごとく遮られ近くの電柱の陰に隠れた。


原「声かけるなんて無粋なことすんなよなーザキ。デートの邪魔しちゃ悪いだろ。」


弘「はぁ?あいつら付き合ってるように見えたか?」


原「いやいや、喧嘩ップルっつうのもあるじゃん。」


弘「喧嘩ップル…っつうか、一方的にスズがやられてるだけだろ…。」


そう言いつつ山崎と原は物陰で二人を見守ることにした。
























花「おい、バッシュって誰のバッシュ見てんだよ。」


「んー…お兄ちゃんか私にかまこっちゃん。」


花「だからなんでそこにオレの選択肢が出てくるんだよ!意味わかんねーよ。」


「意味わかんなく無いよ。まこっちゃんのバッシュ、ちょっと紐が緩くなってるよ。」


花「何が意味わかんなく…え?なんで知ってんだよ。」


花宮は本当の事を言い当てられ少し眉を寄せた。



「だって昨日ゲームしてる時とかずっと紐が気になってしょうがなかったよ。それに原ちゃんとザキさんのバッシュも少し底が擦り減ってきてるようにも見えたかな。」


花「…!」


昨日花宮達がゲームをしてる中、隅っこで自主トレをしながら花宮達のプレイを見ていたスズ。


一回の練習でそんな事細かに見ていたスズに少し驚かされる。


花「…ふは、やっぱお前昔と変わらねェな。キモいほどに」


「キモいって酷いよまこっちゃん…」


花宮が店の中に入り、スズも続けて入った。


























「ねぇまこっちゃん、このバッシュどうかな!お兄ちゃんに似合いそうだよ!」


蘭々とした目で花宮に木吉用のバッシュを見せた。


花「あいつの趣味なんて知るかよ。」


「えー?けどこのバッシュ、絶対お兄ちゃん似合うと思うなぁー。」


キラキラと目を輝かせながらバッシュをまじまじと見る。


それに少し呆れてか、花宮は少し奥の方を見に行く。




花「…あ…月バスこんなに…」


奥には過去に出版された月バスがずらりと並んでいた。


何となく見覚えのある月バスに手を出し、ページをパラパラとめくった。




花「………スズ…」


するとページの端っこの小さい枠に中学一年の頃のスズの姿が写っていた。


【女子バスケに期待の新星現る!!】



写真の横に小さくそう文字が書かれていた。



花「………」


花宮は数秒その写真をぼんやり眺めた。



すると彼の脳裏に過去の映像がフラッシュバックする。











『まこっちゃん……いつかまた一緒にバスケやろーね!』




『まこっちゃんとバスケするの楽しいよ!』




『まこっちゃんはやっぱり男の子だから強くて羨ましいなー。』











『……ごめんまこっちゃん…私…壊れちゃった……ッ














…ちゃん…





っこちゃん…







「まこっちゃん!!しっかり!」



花「…っ!」


ぼーっとしていた花宮に肩を揺すって心配そうに見つめるスズ。


花「…スズ…」


「大丈夫まこっちゃん…?もうバッシュ買うけど、まこっちゃんは?」


花「…オレはまた今度にする。」


「ん、そっか。…それじゃあレジ通してくるから待っててね。」


微笑を浮かべてスズはすぐさまバッシュ二足をレジの方へと持っていった。



花宮は一度また月バスに視線を落とし、閉じてそれを元の場所に戻した。

















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