大空の誓い

□独占欲
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君は、どうして僕だけを見ないの?






開け放してある応接室の窓から、外で騒いでいる草食動物達の煩い声がここまで飛び込んでくる。

僕は書類の上を走らせていたペンを置き、外の様子を伺った。



また、だ。



沢田綱吉がまたあの二人と群れている。
その二人と話しながら歩いていく綱吉に無性に腹がたつ。
あの細い首を締めて、殺してしまえたら君は僕だけのものになるのかい?
そんな思考を振り払う。




僕と沢田綱吉はいわゆる恋人。
綱吉の方から好きだと言ってきた。
僕が男を好きになる……いや、人を好きになるとは思えなかったけれど、確かに自分は綱吉に告白されたとき嬉しかった。
愛しいと、守りたいと思えた。



けれど、恋人になったわりに、綱吉は僕の所へこない。
放送で僕が呼び出した時にだけ、応接室を訪れる。
果たして、本当にこれで恋人と言えるのだろうか。そもそも僕は、彼の笑顔を殆ど見たことがない。

いつも遠慮がちに口角をあげ、目尻を下げながら笑う―所謂苦笑というやつだ―しか見たことがない。

笑顔を振り撒いている癖に僕に向かって微笑もうとはしない。
何故か胸が苦しい。
痛い。心臓の辺りをつかんでも収まらないその痛み。


再びぼんやりと外を見れば、綱吉が二人に向けて満面の笑みを贈っていた所で。








プツン、と。



ナニかが切れる音がした。
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