大空は悪夢の海に堕ちるか?
□第3夢 起きてしまったは裏切
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「ど、どういう事、って何が?」
「しらばっくれるつもりかよ!?」
しらばっくれるも何も、綱吉には本当に心辺りが無いのだ。
全ては椎葉が仕組んだ事だったのだから。
「な、何言ってるの山本……!」
綱吉が気づくと、周りのクラスメート達が全員自分に敵意の視線を向けていた。
獄寺だけは戸惑っているようだったが、綱吉を庇わないところを見ると、疑いの側に気持ちが傾いているのだろう。
「今まで真理亜に怪我させてたのはお前だったんだろ!?サイテーだなツナ!真理亜にあんなこと言うなんて!」
山本が綱吉の肩を突き飛ばす。
なんとか倒れるのを堪えた綱吉は椎葉を、信じられないという目で見つめるが、既にクラスメートは全員椎葉の策に嵌まっていた。
「……っ!?」
耐えきれずに逃げ出した綱吉の後を心配する様に見せかけて、椎葉が追った。
「待って、綱吉!」
階段の一番上に辿り着いた所で、椎葉が呼び止める。振り返り、立ち止まった綱吉に向かって、椎葉は普段からは感じられないような毒々しい笑みで口を開いた。
「ごめんねぇ?驚いちゃったかしら、いきなりあんなこと言われて」
「どういう事?どうして俺が真理亜ちゃんを苛めたことになってるの!?」
迫る綱吉に、椎葉は楽しそうに告げる。
「私がそうされてるみたいに見せかけてただけの話。馬鹿よねぇ、皆。私の話だけで貴方を悪者って決めつけて。ねぇ綱吉、苛められたくないでしょ?だからね、お願いがあるの」
「……お、願い?」
ぴくり、と震えた綱吉に椎葉は告げた。
「私にボンゴレを頂戴?私、ボスになりたいのよね。血筋の事なら安心して。私、ちょっとだけだけど、ちゃんとボンゴレの血をひいてるから、拒絶されることは無いわ。
私にボンゴレをくれるなら、貴方を苛める事はしない。綱吉はボスになりたくないんでしょ?だったら良い取引だとは思わない?」
そう告げた椎葉の目を見て、僅かに迷い、綱吉はしっかりと答えた。
「……る」
「…………は?」
「断る、って言ったんだ。最初に会ったときからあった違和感、ようやく分かったよ。真理亜ちゃんは山本や獄寺くんの事を、物としか見てない。自分の価値を上げるための物としか。
山本と獄寺くんは俺の大切な仲間なんだ。真理亜ちゃんみたいな人には絶対にボスにはなって欲しくない」
返答を聴き一瞬ののち、椎葉は笑い声を上げた。
「あははははははははははっ!!なぁんだ、腐っても超直感はちゃんと持ってるのね。そうよ。あの人達は私の価値を上げるのにうってつけ。貴方の守護者は、貴方を含めて皆、見目がいいんだもの。男も女も関係無く、見た目が良い人間が周りにいるととっても気分が良いのよね。
だから欲しいと思ったの。残念ね、穏便に済ませたかったのに。仕方無いわ」
僅かに顔を歪めて告げた椎葉は、綱吉の目の前で突如けたたましい悲鳴を上げた。
「きゃああああああっ!!」
そして、そのまま自分から階段を転がり落ちる振りをし、頭にわざと怪我をした。
蒼白な綱吉に向けて、椎葉はにやり、と笑って告げる。
「貴方が悪いのよ」、と。