大空は悪夢の海に堕ちるか?
□第3夢 起きてしまったは裏切
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何より信じていた、頼りきっていたリボーンに裏切られたのだ、その心の傷は計り知れないほどに大きい。
それでもなお、笑顔を浮かべようとする椅子に座ったままの綱吉を、包み込むようにクロームがぎゅうっと抱き寄せた。
「く、クローム!?」
「ボス、辛いときは笑わなくて良い……。泣きたいときには、泣いて?」
「辛いときにそれを堪えて笑うのは、より一層辛くなるんですよ」
「僕らしかいないんだから我慢する必要なんて無い、綱吉」
「私で、隠れて見えないから……」
3人から口々に言われて、綱吉は嗚咽を溢し始めた。
「ぅ……ぁああああっ!俺、おれっ……」
泣き叫ぶ綱吉の背中を、静かにクロームが撫でていた。
「っく……ごめん、クロームありがとう」
泣き腫らした目のまま、泣き止んだ綱吉はクロームから顔を離し、ようやく落ち着いた顔を見せた。
「シャマル、封筒と便箋持ってないかな」
突然、思い付いたように綱吉がDr.シャマルに尋ねた。
「あ?おー……ちょっと待てよ、確かここらに……」
ごそごそと戸棚をいじってからDr.シャマルは封筒と便箋を綱吉に渡した。
「どうしたんだい、綱吉」
「え?久々にヴァリアーの皆に手紙書いておこうと思ったんです。……あ、見ちゃダメですからね!クロームも骸も!」
「分かってるよ」
「他人の手紙を見るなんて非常識な事はしませんよ」
「ボスとヴァリアーの人達の手紙だもん」
その優しい空間を見つめながらビアンキとDr.シャマルは呟く。
「……本当に、どうしてリボーン達は気づかないのかしら」
「全くだ。ボーズがんな馬鹿げた事しねぇことくらい分かるだろうが」
この時、綱吉が書いていた手紙を無理矢理にでも見ていれば、最悪の運命は変えられたのかもしれない。
綱吉はこの時既に、一人で覚悟を決めていたのだ。
それから数日。
目に見えて何かが起こるわけでもなく、綱吉にも何もなかった。
そして綱吉に大丈夫だと言われていたために、誰も綱吉の側には居なかった。
だから、起きてしまった。
「大変よ!3人ともすぐに来て!」
「もう、骸ってば心配しすぎだって!」
「恭弥さん!?ホントに大丈夫ですから暴力沙汰はだめです!」
「そんな悲しそうな顔しないでよ、クローム……」
「……ありがとビアンキ。シャマルも。信じて、くれて」
大空は地に堕ち、悪夢は始まった
(君は、あまりにも優しい嘘つきだね)