clericalismo
□第一光 時空渡境
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「はぁっ!?……ちっ!」
瞬時に飛び上がった綱吉は、ソレらに気付かれないように後ろに回り込み、様子を窺う。
「…1、2…7体。何だこいつら。新型のモスカか?」
呟きながら、害を成すものだというのが火を見るより明らかであったため、綱吉はいつもの構えを取る。
一応気は配っていたのだが、どうやらこれ等に死ぬ気の炎を察知するセンサーはついていないらしい。
炎の力で飛ぶ綱吉が、視界に入らない限りは反応を返さないようだったからだ。
『ゲージシンメトリー。発射スタンバイ』
耳に付けたイヤマフから電子音声が聞こえた。次の瞬間。
「X BURNER!」
死ぬ気の炎の塊がソレらを焼き尽くす。
「……何だったんだよ……」
地面に降り立ち、焼け焦げたソレらを確認しているその時だった。
「誰だ!」
振り返り、近くの茂みを睨み付けながら、綱吉は鋭く叫んだ。
リボーンに鍛えられたせいで、他人の気配に敏感になった綱吉は、茂みの辺りに人が隠れているのを見抜いたのだ。
「貴方こそ、誰!?何者なの!?」
凛とした声とともに姿を現したのは、黒い上着に白のラインが入り、ミニスカートの下にはニーハイのブーツを履いたツインテールの美少女。
綱吉が何か言う前に少女は再び口を開く。
「このAKUMA達を倒したのは貴方?」
「これ、悪魔って言うんですか?確かに俺が倒しましたけど……」
超直感で敵では無い、と感じ取った綱吉は、英語で話し掛ける東洋系の彼女に対し、自身もまた英語で返答する。
リボーンと骸と獄寺に、イタリア語と英語を学んでおいて良かった、と内心安堵しながら。
「悪魔じゃなくてAKUMAよ。って、そんなことよりも!貴方、イノセンスを持ってるの!?」
途端に、少女が飛び付くようにして問いかけた。
「い、イノセンス?って何ですか?」
若干引き気味に綱吉は訊ねる。
「貴方、イノセンスを知らずにこのAKUMA達を倒したの!?」
信じられない、と少女は大きな瞳を更に見開いて驚く。
「はぁ、まぁ……。そ、そうだ!今っていつか分かります?あと、ここどこですか?」
「へ?あ、あぁえーっと……ここはヨーロッパ北部よ。で、今は……」
告げられたその日付に愕然とした。
「100年以上、前……!?そんな、てことは正一くん達は関係ないってこと!?」
呆然と呟いた綱吉に、少女はどこか言いにくそうに訊ねる。
「ところで……その、何処かに行く用事はあったりするのかしら?」
「……いや、無いです。寧ろ、行く宛すらも無い」
「何かあったの?……まぁ、話は後で聞くわね。ついてきて欲しい場所があるの。一緒に来てくれる?」
背を向けて歩き出した少女に綱吉は声をかける。
「あ……分かりました。えーっと……」
「あ、名前言ってなかったね。私はリナリー・リー。貴方は?」
「俺は沢田綱吉です」
「名前からして日本人かしら?私は中国人なのよ」
そんな他愛も無い話をしつつ、綱吉はリナリーに連れられて行った。