大空は悪夢の海に堕ちるか?
□第4夢 動きだすは暗殺者
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『……僕からお話し出来ることはこれだけです』
骸は、長く喋りすぎて掠れた声でそう告げて黙り込む。
ヴァリアーもまた嫌な沈黙に包まれ、静寂がその場を支配した。
『すみませんでした……っ!僕らがちゃんとあの子の側にいなかったから!』
「ししょー……」
涙声で謝罪する自分の師匠に、フランは言葉を無くして。
だが。
「うぜぇ」
その謝罪を一刀に切り伏す者が一人。
「う゛ぉぉお゛い!?XANXUS、テメエは何言ってやがん……っでぇ゛!」
「うるせぇ」
スクアーロが食って掛かるがこちらも一言で殴られた。
「……うぜぇんだよ。今更過ぎたことをグチグチ言ったところで何の意味がある。過去は変わらねぇ。これからの事を考えろ」
わかりにくい、XANXUSなりの励まし。
『XANXUS……。……そう、ですね。それで、あの子をお願いしても構いませんか?』
「当然じゃん。王子達は綱吉を匿ってりゃ良いんだろ?お安いご用だっつーの」
「勿論、喜んでやらせてもらうわぁ〜!」
ベルとルッスーリアがそう告げると、レヴィもまた無言で頷いた。
『ありがとう……ございます。では、ビアンキとシャマルにお願いしましたので、そちらで待っていてください。それでは……』
「待て!1つ忠告だぁ゛。跳ね馬の奴はアゼレードの味方だ。気をつけやがれ」
スクアーロが急いでそう注意すると、骸はもう一度礼を言う。
「ししょー」
そこへ、フランが声をかけた。
「……無理しないでくださいよー?ミー達だって弱くないんですから、助けに行きますしー」
フランの言葉に、電話越しで骸が息を呑むのが聞こえた。
『……な、に言ってるんですか。貴方に心配されるほど、僕は弱くありませんよ。では、これで失礼しますね』
今度こそ、電話は切れた。
「…骸ちゃんってば、相当弱ってるわね。あの子でこれなんて、他の2人は大丈夫かしら?」
ルッスーリアの呟きに、レヴィもまた口を開く。
「……妙な事を考えていなければよいが」
「しししっ、でも黙って待ってるっつーのも性にあわなくね?」
「あ、それは堕王子に同感ですー。ミー達だけ傍観者ってのも納得行きませんー」
と、珍しくフランがベルと同意見を主張する。
「XANXUS。どうするんだぁ゛?」
先程から黙ったままのXANXUSに、スクアーロがお伺いを立てた。
対するXANXUSは何かを考えるような仕草を見せた後、その紅玉のような瞳で、スクアーロを睨み付ける。
口がゆっくりと開かれて。
「……良いだろう。綱吉が此方に来てから俺達も日本へ向かう」
その瞬間、だった。
赤と青、黄、そして緑の光がその部屋に満ちた。
その頃。
電話を切った骸は雲雀達のもとへ急いでいた。
「クローム、恭弥くん。ヴァリアーが綱吉くんを受け入れてくれるそうです。ビアンキとシャマルに頼みましょう」
その言葉を聞いた瞬間、2人が目に見えて安堵するのが分かった。
「……じゃあ、僕らは行こうか」
先程とは違う、決意を秘めた瞳で雲雀が言うと、いつの間にか出ていた三叉槍を握りしめ、クロームが頷く。
「あの子を裏切った彼等に、復讐を」
骸もまた、かつてのような憎悪に顔を歪めていて。
その時、だった。
部屋に、紫と藍の光が満ちた。
「お帰り、骸」
「お前だって大事な仲間だろ!?」
「骸、世界も捨てたものじゃないよ」
光が無い世界の意味は?
(貴方がいない世界に価値はありません)