零崎一賊の休息時間

□零崎双子の昔語{ムカシガタリ}
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それから一年弱がたち、綱吉は並中に進学した。



その後も綱吉と雲雀の関係は変わらず、そのまま一種の不変的なそれは、静かに続いていくはずだった。



しかし、綱吉が進学してすぐのこと。


「……」


放課後、無言のまま応接室に入ってきた綱吉は、叩きつけるようにして鞄を机に乗せる。
他の人間なら雲雀に瞬殺されているところである。


「……やぁ。荒れてるじゃない、なにかあった?」


執務机に向かっていた雲雀は手を止めて、不機嫌そうな綱吉に問い掛けると、綱吉は執務机を回って、雲雀の首に手を回して抱き着く。


雲雀は黙ったまま抱き着いてきた綱吉の頭を撫でて宥めた。

綱吉がこういう行動を取るということは、かなりの苛立ちを見せているということを、雲雀は長年の経験上知っていた。



「……どうか、した?」


再び聞いた雲雀に対して、綱吉は絞り出すような声で言う。


「……イタリアから……、アルコバレーノが来た。俺をボンゴレのボスにするって……」


「虹が、かい?……君はなりたいわけじゃないだろう?」


「当たり前だろ。……大体、ホントの俺を見抜けないでダメダメだと思ったやつなんかに、従う気も……協力する気すら、起きない。……恭弥しか、ホントの俺を見てないのに」


ぎゅう、と一層雲雀に抱き着いて。


「くだらない奴ら。君の本当の価値も、姿も、想いも分かっていない癖に、君に流れる血だけを利用しようとするだけの、愚か者たち」


愛しげに綱吉を撫でつつ、雲雀は吐き捨てる。





そして。



ぴくり、と二人が僅かに窓の外に注意を向けた。


「……綱吉」


「うん、知ってる。……アルコバレーノが来たから、大方俺が候補になったと思って排除しにきたんだろ」


「……久しぶりに遊ぶかい?」


「あぁ。……ストレス発散したいな」


言うが早いか、綱吉と雲雀は応接室から飛び降りた。
幸い、放課後であったためそれを見た生徒はいなかった。……まぁ、それを分かっていて綱吉達は飛び降りたのだが。



そのまま、なにも知らない振りをして誰もいない細い路地裏に二人揃って姿を消し。


振り返ると、声をかける。



「バレバレなんだよ。とっとと顔を出せ」

「君達、その程度で刺客を名乗るつもりかい?」
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