大空は悪夢の海に堕ちるか?
□第1夢 始まるは復讐
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「……大空のリングはどうなったの」
雲雀は、ギリッと自分の指に嵌めた雲のリングごときつく指を握り締めながら骸達に訊ねる。
「あの女が……椎葉真理亜……いえ、マリア・アゼレードが所持しています」
答える骸は、名を呼ぶことすらおぞましいとでも言いたげに吐き捨て。
感情の起伏を余り顔に出すことをしないクロームまでもが一目で嫌悪感とわかる表情を前面に押し出していた。
「そう。だったら僕はこれを放棄する。こんなもの、いらない」
「私も。代理、だけど……降りさせてもらう」
「僕は『沢田綱吉』の霧の守護者ですから。あの子のいないボンゴレに興味も執着もありません」
カラン、と。
やけに軽い音と共に指輪はソファーの間にあるテーブルの上を転がった。
それは、ボンゴレ十代目の守護者が二人、消えたことを意味していた。
「それより、今は綱吉の安全を確保すべきだ。これ以上、あいつらにあの子に危害を加えられてなるものか。……どうしたらいいと思う?骸、クローム」
雲雀の問いに、骸が遠慮がちに案を出してみせた。
「……ヴァリアー、は如何です?」
「……骸様。ヴァリアーが信用出来るという保障は、ありますか……?」
クロームのすがるような問いかけ、というよりは嘆願か。
に、骸は頼り無げながらも首を縦に降る。
「綱吉くんがXANXUSと手紙で交流を持っていたのを知っていますね?」
「綱吉から聞いたからね。……もともとはあの赤ん坊のふざけた策略だったらしいけど。仲良くなった、って嬉しそうだったよあの子」
雲雀が吐き捨てた赤ん坊の言葉には、嘗ての憧憬や尊敬、興味など欠片も籠っていない。寧ろあるのは侮蔑と失望。
だから甘いと言うのだ。
何処の世界に命をかけて敵対した人間と仲良くなりたがる人間がいるのか。
自身がその『甘さ』によって助けられた骸は内心苦笑する。
「調べてみたんですが……XANXUSはアゼレードを嫌っているようなんです。そして、ヴァリアーの幹部も」
「……情報源は?」
「僕の不肖の弟子より。……信用、出来ますか?」
「……あの子、なら出来ます」
「君が信用するほどの相手なんだろう?」
返答は是とするもので。
骸は話を進めた。