大空は悪夢の海に堕ちるか?
□第3夢 起きてしまったは裏切
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「どうしてそんな事になった」
この場面において、激昂しないXANXUSが逆に恐ろしかった。
電話の向こうから、深い、深い。ため息が聞こえた。それは悲しみを堪えているようにも、憎しみを押さえ込んでいるようにも聴こえるため息だった。
「お話しします。全てを」
骸は一言呟いて、語り始めた。
悪夢のような、その話を。
―――――――――
「護衛!?」
綱吉は驚いて叫んだ。
自身の小さな家庭教師はいま、なんと言ったのか。
「そうだ。ボンゴレ本部からお前の護衛として派遣されてきた。こいつも僅かだが、ボンゴレの血を受け継いでるんだぞ」
「初めまして。マリア・アゼレード、と言います。こちらでは椎葉真理亜と名乗って、綱吉様の護衛につかせていただきます」
黒髪の美少女は、言いながらペコリと頭を下げて綱吉に微笑みかけた。
「え……あ、あの、様付けじゃなくていいよ!それと、敬語も!」
そう言われて、きょとんとしたようにマリアは微笑む。
「……では。よろしく、綱吉」
「うん、此方こそよろしく!」
最初は確かにそんな素振りなどなかった。
あの獄寺でさえもマリアになついていたのだ。一番初めは、ある日登校したマリアが、足に包帯を巻いていたことからだった。
「マリアさん!?どうしたんっすか!?」
その時、綱吉はまだ登校してきてはいなかったので、知らなかった。
「あ……これ?綱吉が……ううん、何でもないの。気にしないで」
「は、はぁ……」
そのタイミングで、綱吉が教室に入ってきた。
「おはよ獄寺くん、山本、えと、真理亜ちゃん」
「お、はようございます10代目」
僅かにどもった獄寺に、何も知らない綱吉は首を傾げ、そのままマリアが包帯を巻いていることに気付き、慌てて訊ねる。
「ま、真理亜ちゃん!?どうしたのその怪我、何かあったの!?」
「い、いや……あの、何でもないの、きっ気にしないで……!」
マリアは、言いながら怯えたような態度をとった。
その姿に、獄寺と山本は何らかの疑いを持ったようだった。
基本的に、実際に苛められたのだと口に出して訴えるよりも、何も言わず、否僅かに臭わせるような発言のみをしたほうが真実味が増す。
そして、後は聞いた方が勝手に想像を拡げていってくれるのだ。
……そう。たとえそれが根も葉もない嘘だったとしても。