大空は悪夢の海に堕ちるか?
□第6夢 呼び掛けるはT世
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真っ暗闇で、誰かの声がする。
【]世……】
【聞こえるか、]世……?】
俺を、呼ぶのはだぁれ……?
【]世……いや、綱吉。愛しい我が子孫よ……。どうか返事をしてくれ】
この声……
「……ぷりー、も?」
綱吉が掠れた声でその人を呼んで。
真っ暗で何もないその場所にポゥッと温かなオレンジの光灯る。
そして。
【愛しき……綱吉……】
ふわりと舞い降りたT世は優しく綱吉を抱き締める。
真っ黒な世界に、綱吉とT世だけが存在していた。
「……っ!」
抱き締められた綱吉の身体が強ばる。
【大丈夫……オレはお前の味方だ】
抱き締めながら、片手でゆっくりと綱吉の頭を撫でる。
強張っていた綱吉の身体の力が抜けていって。
そろそろと腕を上げ、T世の背に回すとそのまま抱き着く。
「T世、T世……!」
苦しそうに叫ぶ綱吉の頭を、黙ってT世は撫で続けた。
【落ち着いたか、綱吉……?】
静かになった綱吉に対して、労るように優しく声をかける。
「……う、ん。T世は、どうしてここにいるの……?俺は、どうなったの?ここは……、どこ?」
【ここは、お前の心の中だ……。何があったか、覚えているか綱吉?】
「おれ……の?俺、は……!いや、だいやだ!嘘だあんなの嘘だ!違う、俺は……!違う!」
突然パニックを起こした綱吉を、T世が慌てたように再び抱き締めて宥める。
【落ち着け。ここには誰も来られない!……お前とオレだけだ】
「あ……俺、どうなって……?」
【向こうの、お前は……。守護者達に傷つけられて意識を取り戻していない……】
息を一瞬詰めてから、綱吉は寂しそうに微笑んだ。
「お、れ……一人になっちゃった、んだ」
【それは違う!】
T世が急いで反論する。
綱吉は瞳を丸くしてT世を仰ぎ見て。
【お前は独りではない。確かに、あの女に与する愚か者も多いが……お前を信じ続け、傍で支えた者たちも、遠き異国の地でお前を心配し続けた者たちもいる。……そして、我々初代ファミリーの守護者は、オレも含めて全員お前の味方だ】
「……ほん、と?」
訊ね返す綱吉の声は震えていて。
【本当だ。お前は、独りではない。お前は……いらない人間などではない】
告げるT世の瞳は優しかった。
「でも……どうして、T世はここに?」
【お前に戻ってきて欲しい。これはオレだけではなく、お前の雲と霧の願いでもある。……彼等は、謝りたいのだ。……お前に】
「どうして!?恭弥さんや骸が、クロームが謝る必要なんて……!」
【彼等はある、と考えているんだ。お前を守れなかったのは己の責任だと。自分を責め、そして復讐しようとしている】
「そんな……!恭弥さん達は悪くない!俺が自分で選んだんだ。それに、復讐って……!」
真っ青になって叫ぶ綱吉を、T世が再び宥めた。
【大丈夫だ。アラウディとスペードが止めた。そんな方法は使わない。正式に、お前のもとに我がリングを、我が罪を渡そう。……リング争奪戦を通して】
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