大空は悪夢の海に堕ちるか?

□第8夢 目覚めるは真の王
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【綱吉……】



綱吉の深層心理へと沈んだT世は、静かな声で綱吉の名を呼ぶ。



綱吉がヴァリアー本部へと運ばれてきてから、二週間近くが立とうとしていた。


その間中、T世は毎日綱吉を訪ねていた。

起きろ、と促すわけではなく。
綱吉を言葉に出して慰めるわけでもなく。


ただただ、毎日訪れてはヴァリアーの人間達や雲雀達、T世の事についての他愛もない話を、しばらくの間笑い混じりに語り合って。


そしてT世は帰っていく、ただそれだけ。


ただそれだけをずっと繰り返していた。




「ジョット!……こんにちは!」


【あぁ。元気そうで何よりだ……綱吉】


ふわりと綱吉を抱き締めてから、T世を知る者は驚くであろうとても優しげな、愛しい人間を見つめるような瞳で微笑む。



【今日はな、これを届けに来たんだ】


「届けに?って?」


【オレが毎日お前に会っていると、皆に言ったら怒られた】


「え?」


少しだけバツの悪そうな顔をするT世に、綱吉がきょとんとした顔で問い掛けた。


【いや……その。オレだけお前に会っている事があいつらには我慢ならなかったらしい。……ズルいと言われてな】


「ず、ズルい?」


目を白黒とさせる綱吉に、T世はまた優しく微笑んで言う。



【皆お前に会いたがっているということだ。……とは言っても、実際会いに来ることは出来んからな。メッセージを預かってきた】


「メッセージ……?」


【あぁ。見てやってくれるか?】


T世の言葉に、綱吉は頷いて。


「っ、勿論!」


返事を聞いて、T世が突き出した拳をゆっくりと開く。


そこから、小さく温かな光が発せられて。




暗闇に、映像が浮かび上がる。

『あら?もう映ってるのかしら?ちょっと、レヴィ!早くしなさいよ!』


一番最初に姿を見せたのはルッスーリア。


『待たんか、今気の利いた言葉を考えてだな……』


『究極に遅いぞ、なぁランポウ!』


『まったくです。もう五分以上前からあんな調子ですからね』


呆れたようにナックルとランポウが、こちらに向かって微笑みかけながら言う。


『ほら、もう時間ないわよ!?』


『なに!?待て、すぐに……』


レヴィが此方に向かってこようとした、その瞬間。


『タイムアウトだな』


T世の声だけが映像に割り込み。



『ま、待たぬかT世!』


レヴィの叫びも虚しく、映像は途切れた。


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