零崎一賊の休息時間
□零崎双子の昔語{ムカシガタリ}
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「君、何者?」
「……見つかった。面倒事は嫌いだったんだけど」
雲雀恭弥と沢田綱吉の出会いは、血の海になった路地裏だった。
倒れているのは、黒服のいかにも怪しげな男達。
血の海と、死体の山の中心にいたのは沢田綱吉で、それを見つけたのが雲雀恭弥。
綱吉がナイフから滴る血を、一閃して振り払う。
「……死体が1つ増えるのか。面倒臭い」
そう言って切りかかろうとする綱吉の足を留めた雲雀の一言。
・・・
「……ねぇ。それら、僕が処分してあげようか?」
「……出来るのか?」
死体を前にして騒がない子供にも興味があったのかもしれない。
「当然。僕は雲雀恭弥。君は?」
「俺は……沢田綱吉」
「ふぅん……。よろしく」
二人の出会いは決して良いものではなかった。
だが、その体に眠る素質からか。二人は幾度となく連絡を取り合い、一年経つ頃にはとても親しくなっていた。
「マフィア?それもボス?君が、ねぇ」
「それは信じてない顔だな、恭弥」
不服そうに口を尖らせる綱吉、ごめんごめんと軽く謝りながら彼の頭を撫でる雲雀。
この頃から既に、兄弟としての礎は出来上がっていたのかもしれない。
「で?いつも襲ってくるあの黒服はマフィアの殺し屋だか、刺客なわけだ?」
「そういうこと。俺はマフィアのボスになんてなる気は無いってのに、いちいち刺客送り込んでくるなんて、ホント馬鹿」
「何のために皮を被ってるんだか、ね?」
「まったくだ。……ところで恭弥、中学はやっぱり並盛中か?」
小学校ですら、並盛を牛耳りかけていた雲雀である、恐らく中学に上がれば完全な支配が可能だろう。
「そうだね。綱吉も来年来るでしょ?」
「あぁ。……しっかり統治しといてよ?」
「分かってるよ。君が、来るまでにね」
雲雀恭弥が、唯一心を許した相手が快適に過ごせるように、という理由で並盛を完全支配した事を知る人間は、当人と……心を許した相手である綱吉だけしか知らないことだった。
それどころか、雲雀と綱吉がそれほどまでにお互いを大切に思っている事を知る者すらいなかった。
雲雀は常に最強にして孤高の存在であったし、綱吉は普通よりも劣る部類に入るひ弱な少年の皮を被っていたのだから。