大空は悪夢の海に堕ちるか?

□第4夢 動きだすは暗殺者
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「待ってください!まだ彼等と決まったわけではありません!」


「待って、恭弥……!行っちゃダメなの!お願い、待って……」


二人から止められ、雲雀はようやく振り返って。



「君達は悔しくないのかい!?やったのはあいつらに決まってる!銃だの日本刀だの……そんなもの、一般人には手に入れられない!」


「分かってます、ですが!確信なく動けば綱吉くんを傷つけることになります!あんな人間達でも、この子は仲間だと信じてたんです!」


「ボスが、辛い思いをする……。それに今はボスの側にいてあげなきゃダメ……!」


二人の説得に、雲雀はその場に崩れ落ち、俯いた。


「わかってるんだよ。わかってる……!僕がこの子の言うことを鵜呑みにして、側で守らなかったから……!」


あの鬼の委員長が。孤高とまで呼ばれた彼がこんな弱い姿を見せるなんて、と驚くかもしれない。

だが、逆なのだ。

あの雲雀だからこそこうなってしまう。
孤高と呼ばれるということは、誰にもすがらない、すがることを知らない、支え合うことを知らないということ。

初めて誰かを支え、支えられる事を知った雲雀だからこそ、それを教え、支え合う立ち位置にいた綱吉が倒れたことでここまで取り乱した。



そんな雲雀を見て、クロームもまた崩れ堕ちて。

彼女もまた、骸に助けられるまでは一人ぼっちだった。
だからこそ、彼女にとっては自分を認め、信頼してくれた綱吉はクロームにとって特別な存在。


骸は、崩れ堕ちる事は無いものの、それは自分がしっかりしなくてはという自負に他ならなくて。
それがなければ彼こそ、とっくに潰れてしまっているだろう。



「恭弥くん、貴方だけのせいではありません。僕らも同じなんです……!」


「ボスの、側にいなかったのは私達……!悪いのは、私達皆……っ!」


うちひしがれる3人に、シャマルが一言、言い放った。


「お前ら、今日はもう帰れ」


途端、弾かれたように雲雀が顔をあげる。


「どうして!僕らこそこの子の側にいなくちゃいけないのに!」

「そうです!帰るなんて……「馬鹿か!お前ら、自分の顔を見てみやがれ!ボーズなんかより、よっぽど死人みてえな顔だぞ!一度休め。守るにしてもそれからだろう!」


シャマルが怒鳴るとクロームがぴくりと動いた。
そして、立ち上がる。




「骸様、恭弥。……帰ろう」


「クローム、何を言って……!」

「今は、この人にボスを任せて、休むのが先……。



……犯人を、探さなきゃいけないから」



クロームが告げた途端に、雲雀と骸の目に鋭さが戻って。


「……そうだね」

雲雀は緩慢ながらも立ち上がり、骸はゆっくりと瞳を閉じた。




「……一度、帰りましょう。後はお願いします、Dr.シャマル」

「……あぁ」


バタン、と閉じられた扉を見てからシャマルは大きく息を吐いて呟く。



「ここぞというときに強いのは女の子、ってな……。……ボーズ、良い仲間を持ったな」



医療機器のチューブに繋がれ息をする綱吉を優しく見つめながら。



しかし、その指に大空のリングは……無かった。



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