DMC

□Changing places 
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バージルが目覚めたのはダンテが出て行ってから一時間半ほどたった頃だった。

意識がはっきりしないままベッド脇に置いておいたアラームを手にとり時間を確認して飛び起きた。
「なっ!!もうこんな時間に…俺としたことが寝坊とは!!」

依頼主と待ち合わせの時間は過ぎてしまっていた。隣で寝ていたのであろう弟の姿はない。
すぐにでも着替えて出掛けたいのだが体中に昨夜の名残が残っているためシャワーに入らざるをえなかった。

明日は朝早いから寝かせろと言ったのに…何回も……////

怒りと羞恥で顔がほんのり赤くなるバージル。

あのバカめ!
起きているならなぜ自分も起こさないんだなどと愚痴りながら気だるい体にシャワーを浴びせる。時間が無いので軽めに洗い、髪もろくに乾かさないままバスローブ姿で自分の部屋へ向かおうとした時、声がかかった。

「どうも、お邪魔してるわよ★」

見ると女デビルハンターことレディが事務所のソファにゆったりと座って片手を振っていた。机には自分で煎れたのかカップが置いてある。
その様子を見たバージルは眉間に皺を寄せて文句を言う。
「勝手に人の家に入って寛いで居るとは良い度胸だな女」
「あら?なんだバージルだったの、髪の毛下ろしてるからダンテだと思ったわ。」
バージルの冷ややかな視線や言葉も気にしていない様子。
「ごめんなさいネ。何回ベル鳴らしても反応が無かったから勝手に入って待たせてもらってたわ〜」
そう言って紅茶を飲み寛ぐレディ。
「このお茶おいしい。バージルのチョイスでしょ。あたしも買おうかな〜。どこで手に入れたの?」
「忙しいんだ、今日の用件を言え」
まったく反省の色がないレディの質問は聞かずに問いただす。こちらは時間がないので一刻でも早く支度にとり掛かりたい状態。
「もしかしてこれから仕事?」
「そうだ」
「そっか。じゃあダンテ居る?まだ寝てるのかしら?」
「家には居ない。」
「どっかに出掛けたの?」
「知らん」
もういいだろうと言わんばかりにバージルは身を翻して身支度をするために部屋に向かっていってしまった。



しかし数分後に、バージルは同じバスローブの格好のまま一階へと降りてきた。
「……なに、その格好で行くの?」
「そんなわけないだろうっ!!」
軽く焦りと怒りが混ざった口調でバージルはあちらこちらといろんな部屋を行ききしていた。
しばしその行動を見ていたレディが声をかける。
「どうかしたの?」
レディの問いに動きを止めたバージル。

少しの沈黙後、
「俺の服が………無い」
「無いって洗濯して乾かないとか?」
「そんなヘマを俺がすると思うのか貴様。」
「それじゃ、ダンテが着て行っちゃったんじゃないの?」
そしてまた一口紅茶をすするレディ。
「!!」
冗談で言ったであろうレディのその一言に、なぜかバージルは確信めいたものを感じた。
そういえばアイツの服は脱衣所に散らかっていた…。赤いコートは壁にかかっている。
だがあのバカは今家に居ない。
よく見ると刀掛けに置いてあった愛刀の闇魔刀もなくなっている。

「アイツ、自分の服もわからないくらい馬鹿だったのか……」
額に手を当てて本気で弟の愚かさぶりに頭を悩ませる兄、バージル。
レディはそんなバージルを見て、貴方はなかなか天然ちゃんよと内心ほくそえんでいた。
「さすがにそこまでお馬鹿じゃないと思うわよ」
真剣にショックを受けているバージルにツッこむ。
「じゃあ何故だ?」
「着たかったんじゃないの?本人が。」
「ダンテが?」
「そ。アイツ、マニアだから」
「???」
訳がわからんといった顔をしているバージルにレディが促す。

「いつまでもそんなとこで突っ立てて悩んでいていいの?仕事あるんでしょ」
「そうだ!これ以上の遅れはまずい!だが服が・・・」
「あるじゃない、ダンテの服が」
壁にかかっている赤いコートを指差す。

「……は?」
「だから、ダンテの服着ていきなさいよ」


しばしの沈黙・・・・

「俺がアイツの服を着る!?冗談はよせ!アイツの服のセンスなど俺には理解できん、素肌にコートだぞ!?きっとあのコートは蒸れて汗臭いに決まっているっ!!」
顔を青ざめて身震いしながら拒絶するバージル。

「じゃあどうするの?裸で行くの??それともバスローブ???」
「ぐぅ…」
押し黙るバージル。
「少しの間我慢すればいいことじゃない。そんなに大変な依頼でもないんでしょ?」
「くそっ、覚えていろダンテ」
覚悟を決めたらしいバージルにレディが一言、
「時間がないから髪の毛セットする余裕もないわね」
「今回は仕方がない。」

ズボンはいいとしてもコートは素肌で着たくはないので唯一見つけた黒のVネックインナーを着て、ファ○リーズを数回かけたコートを羽織った。
見た目はダンテのバージルが完成した。

「それじゃ私が仕事場まで送っていってあげるわ」
しぶしぶバージルは頷いた。
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