愛でる虎 逃走編
□愛でる虎30
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しん…と静まり返った真夜中。
俺は家の前にいた。
梵天丸様のいる城から少し歩いたところにある、こじんまりとした屋敷。
慎ましやかではあるが庭には畑があり、父の趣味で様々な野菜が植えられている。
軒先にかかっている干し柿は、母が端正込めて毎年作っているもので、今年は例年より上手く出来たと言っていた。
…そして、いつもなら灯りは消え、寝静まっているはずであろうはずの我が家からは今、わずかな灯りがもれている。
想像に難くない。
間違いなく、喜多姉さんだ。
行き先を告げず俺が家を飛び出した時、姉さんはは絶対に起きて俺を待っている。
父上と母上が「いつか帰ってくるさ」と全く気にせず寝てしまおうが、だ。
それこそ、鬼のような形相で玄関に立ちはだかって…
「……ね、姉さん、ただいm「このくそガキがあぁぁああぁぁぁぁあ!!!!!!」………!!」
あぁ……俺は帰ってきたんだ…