愛でる虎 逃走編
□愛でる虎25
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「………喜多姉さん」
「ん?なあに、小十郎」
「さっきの話…本当だと思うか?」
「さっきの話って…?」
「…隣の男たちが話していた、虎の…」
「さあねぇ……ただの噂話じゃない!」
「しかし、本当ならば梵天丸様の目m…」
「小十郎!!」
「っ!………はい」
「…くだらない話は終わりよ。早く、帰りましょう」
「………はい」
くだらない話…
…そう、くだらない話だ。
話してたって意味のない、ただの噂話…
俺は喜多姉さんの半歩後ろを、早足で歩いた。
早く城に戻ろう。
梵天丸様が待っている。
虎の話など、さっさと忘れてしまうんだ。
さっさと…
しかし、さっさと忘れたはずの虎を探しに城を飛び出すことになるなんて、その時の俺は想像もしていなかった…