愛でる虎 逃走編
□愛でる虎25
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日に日に弱っていく梵天丸様…
頬の腫れは引いても、心についた傷はどんどんと広がっている…
もともと不安定だった梵天丸様。
それが、あれからさらに増したように思える。
話しかけても反応が薄く、もともとの小食が輪をかけてひどくなった。
一日の大半を部屋の中で過ごし、陽にあたるのを極端に嫌がる。
常に見張っていないと、すぐに消えてしまうのではないか。
そんな危うさがあった…
「…喜多姉さん」
「…何?」
「俺は…何が出来る?」
「……………」
「何かしてやれないのか…?」
「……あなたは、傍にいるだけで…」
「それじゃあ意味ねぇんだ…!!」
「小十郎…」
「俺は……」
「……………」
何でもいい。
誰でもいい。
梵天丸様を救ってくれるのなら。
俺は、何かにすがりたかったのかもしれない。
何も出来ないことが悔しくて。
ただ傍にいるだけの自分がもどかしくて。
闇雲にでも、何かをしていたかったんだ。
気づけば、俺の足は…甲斐に向けて走り出していた……