第一部:啓いた光
□第十六話
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その日は、稀に見る大きな月。
空は澄み渡り、月明かりが影をつくる。
月明かりに影がある。
そこには男が立つ。
派手な女物の着物に左目には包帯。腰には刀があった。男はキセルを口にくわえる。
「………最近は、獣がよく鳴く」
男は連日、人を斬った。血吹雪が男に降り注ぎ、男の身体に付着する。それを拭いもせず、男は踵を反す。
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