日和部屋

□それはきっと熱のせい
2ページ/6ページ

「曽良くんが怒ってる理由って…やっぱり、私が体調を崩したから?」
「えぇ。自覚無いんですか?」

冷たく言い放つ曽良の、何かを感じ取った芭蕉は勇気を振り絞って言葉を続ける。

「曽良くん、自分を責めてるような気がして…」
「…!!」

食事の準備をしていた曽良の手が止まる。

「何が君をそうさせてるのか分からないけど…悩んでる事があるなら…」
「…」

一瞬、何か言いたげに曽良の口が
開かれたが、すぐに目を伏せて「特にありません」とだけ言って黙ってしまった。

「そっか…」

それ以上聞く事はしなかった芭蕉は静かに頷くとだるい身体を起こして、茶碗に取り分けられた粥を受け取る。

「…すみません」
「え?」

今まで黙っていた曽良が、ようやく口を開いた。

「こんな接し方しかできなくて…」
「…大丈夫、松尾分かってるから」

茶碗を盆の上に置いて誰よりも愛しい曽良を抱きしめる。

「優しい言葉をかけてやりたいのに、何て言ったら良いのか…分からなくて」
「曽良くんは不器用なだけなんだよね…でも…」

芭蕉は曽良を一層強く抱き締める。

「そういうとこも…好きだよ…」
「…っ////」

突然そんな事を言われた曽良は驚いて目を見開く。
そして身体を離した曽良は師の名を呼ぶ。

「芭蕉さん…」
「ん?」
「抱いて…いいですか?」
「なっ…この状態で何言ってんの!しかも病人に…っちょ、待ってってば…!」

粥の置いてある膳を退かし、布団に押し倒された芭蕉は曽良を押し返そうと必死になっている。
だが、風邪のせいもあってか思うように力が入らない手では曽良の身体はびくともしない。

「…じゃあ素股でもいいんで」
「そういう問題じゃないだろ!曽良くんに風邪が感染っちゃうよ!?」
「その時は貴方が看病して下さい」

優しくしますから…と曽良は嫌がる芭蕉の着物の帯を取り払った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ