日和部屋

□雨の日・番外編
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僕は昔から雨が嫌いだった。雨が過去を呼び覚ましてしまうから…



両親が亡くなったのも雨の日。
それから、まだ幼かった僕は親戚の家に身を寄せたがそこの両親が死んだのも雨の日。

それからはずっと一人きりだった。
芭蕉さんに会うまでは…。

松尾芭蕉と出会ってから、僕の世界は変わった。
物の感じ方も変わった。

何に対しても無関心で何事にも興味を示さない僕に、俳句を教えてくれたのも芭蕉さんだった。

もし僕と芭蕉さんが出会っていなかったら、僕はどうしていただろうなんて想像もつかない…。

僕はいつからあの人に依存してしまったのだろう。


いつしか雨も止み、日が射し込んできた。

願わくば、時の許す限り芭蕉さんの傍にいたい…。

「芭蕉さん…」

無意識に目の前で微笑む師の名を呼ぶ。
師は微笑みを絶やさず言葉の続きを待っている。

「…好きですよ」

僕の心からの気持ちを芭蕉さんに伝え、その口唇に軽く接吻した。

…このまま時が止まってしまえば…永遠に貴方と共にいられるのだろうか…。
しかし、時は容赦無く進み続ける。

幸せと一抹の不安に僕は自虐的に笑うと、晴れた空を見上げた。
嗚呼、日が明るい…。
まるで貴方のようだ…。

        完
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