日和部屋

□それはきっと熱のせい
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旅の途中、芭蕉さんが風邪をひいた。
寒空の中、薄着で走り回ったりしているからだ。

「ごめんよ曽良くん…」
「謝る暇があるなら早く治してください」
「うぅ…弟子が怖い…」

いつにも増して不機嫌な曽良は眉間にしわを寄せ、寝ている芭蕉を見下ろす。

「曽良くん…怒ってる?」
「えぇ、激怒しています」

口ではそう言いながら、氷水で固く絞った布を芭蕉の額に乗せる。
ひんやりとした感触に、熱が少し引いていく感覚がした。

「食事…持ってきます」
「…うん」

そして曽良は部屋を後にした。熱で思考が混乱する中、近くに置いた鞄の傍らにいるマーフィー君を抱き締める。

「不器用なのは昔からだけど…たまには優しい言葉くらい掛けてくれたっていいのに…ねぇ、マーフィー君…」

静まり返った部屋の中、薄汚れたぬいぐるみに話し掛ける。
しばらくすると、曽良が盆を持って戻ってきた。

「何一人で喋ってるんです?熱のせいで幻覚でも見えてるんですか?」
「ぁ、ぁの…曽良くん」

さっきから態度が冷たい曽良の理由を知りたくて、芭蕉は恐る恐る話し掛ける。
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