日和部屋

□初雪
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ある寒い早朝。
まだ寝ている曽良を起こそうと、芭蕉は何度もその身体を揺する。

「曽良くん、曽良くん!起きてよ!見せたいものが…」
「…それ以上五月蝿くしたら断罪しますよ」
「っ…じゃ、いいよ!曽良くんなんか寝過ぎて干物になっちゃえ!!」
「何を馬鹿な事を…」

1人で怒りだした芭蕉が部屋が出ていくのを寝呆け眼で見送った曽良は寝直そうと目を閉じた。
〜数分後〜

眠りについた曽良の顔に冷たいものが降り落ちる。

「っ…!」
「えへへ。驚いた?初雪だよ」
「この馬鹿ジジイが!!」
「ぐぼぁ!!」

またもや眠りを妨げられた曽良は問答無用で断罪チョップをお見舞いする。
身体が「く」の字に曲がった芭蕉は柱に激突した。

「ちょ…っ今くの字に曲がったよ!松尾びっくり!」
「人の安眠を妨げるからです」

ふと顔を上げると、外の景色が白く色付いているのに気付いた。

「雪…?」

外は真っ白な雪が降っていた。

「そうだよ!だから雪を見せてあげようとわざわざ持ってきたのに…松尾バションボリ」
「だからって雪を人の顔に振りかける馬鹿が何処にいるんですか?」

曽良は気怠そうに言うと、柱の隣でしゃがんだままの芭蕉に近づく。

「曽良くん!?待って!断罪だけはーーっ!!」

曽良は半泣きで顔を庇う芭蕉の手を取り、手の甲に口付けた。

「なっ…!////」
「…冷たい手」

殴られるのかと思っていた芭蕉は、曽良の意外な行動にただただ驚いている。
「な、な、な!?」
「何赤面しているんですか?…キモい」
「な…っ師匠に向かってキモいとは失礼だな!!撤回しろこの鬼…っん…っ!」

憤慨している芭蕉を自分の元へ引き寄せた弟子は、少し冷たくなっている芭蕉の口唇を奪う。

優しい接吻は一瞬で終わり、曽良の舌が芭蕉の舌を絡め取る。

「ん…っぁ…、曽良く…っ」

一通り口内を犯した曽良は満足したように口唇を離した。

「曽良…くん?」

惚けたように曽良を見上げる芭蕉の頬を撫でる。

「もう、寒くないでしょう?」
「ぅ、ぅん…////」

芭蕉が頷くと、曽良は微かに笑って立ち上がり、伸びをした。

「貴方のせいですっかり目が覚めてしまいました」
「ぁ、曽良くん…何処行くの?」

部屋を出ていこうとする曽良の着物の裾を掴んで尋ねる。

「外に行ってきます。良い句が思い浮かぶかもしれないので」

それだけ言い残して曽良は外へ向かった。
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