第二書庫

□俺の恋人=上司
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某月某日某所、瓦礫と化した建物らしき周辺で銃声が響いていた。

「…第三部隊消滅、第四部隊戦闘配備」

土煙やら埃やらが舞い上がる中、一人の青年が小型の無線機を使って指示を出す。
すると上空から人の形をした何かが落下してきて青年の側に着地を綺麗に決めた。

「まだ終わらないのか?」

「あぁ、相手がしつこくて…後は頼む、殺さない程度にな」

上司らしき青年は、落下してきた者と軽く会話すると踵を返して土煙の中に姿を消した。

「殺さない程度に…ねぇ」

一人残った者は、腰にあるホルダーから銃を抜くと、敵の方に向かっていった。










「なんでこうなるかな!?殺さない程度にって言ったでしょ!!」

「殺してねぇよ、さっきから言ってんじゃねぇか」

「ピクリとも反応しないのは死んでるんですー!!」

次の日の朝。
とある国の軍本部にあるうちの一つの部屋で青年二人が口論をしていた。
片方の、椅子に座っている方がおそらく上司で、上司が作業をする為に使う机の上に座っているのが部下なのだろう。

「あれは死んでねぇよ、仮死状態なだけだ」

「仮死…?」

「お前は殺さない程度にって言った、だから俺は仮死状態にした…間違っちゃいねぇだろツナ」

「…なんだ、あれ仮死状態だったの」

「今ごろ情報部あたりが尋問して、ボスの居場所を吐かせようとしてんじゃねぇか?」

「…よかった、ならいいや、お疲れ様リボーン」

ツナと呼ばれた上司はニコリと笑うとリボーンという部下に手を差し出した。

「なんだ?」

「被害報告書、書いてきたよね?」

「……………」

ツナのニコニコ笑顔がだんだんと変化してきて、笑ってない目がリボーンを見つめる。

「あれだけ暴れたんだもの、何かしら壊したでしょ?」

「……無人のビルを二つ」

「……………」

リボーンの言葉にツナは笑顔を消すと机に顔を伏せてしまう。
(よく聞くとため息もプラスされている)

「…いいよ、リボーン、ご苦労様、今日明日休みね」

「…ツナ」

長い長いため息の後、ツナは顔を上げて眉を八の字にさせて困ったように笑ってみせた。

「後は俺がやっておくから…帰っていいよリボーン」

「だが、」

「これも上司の責任だからね」

十枚ほどの紙を机の引き出しから取り出すと、ツナは万年筆を握った。

「壊したビルの持ち主には俺が謝っておくから」

「……」

リボーンは万年筆をもっているツナの手を無言で掴む。

「リボーン?」

「悪かった…」

そしてゆっくりと顔を近づけてツナの顔中にキスの雨を降らせる。

「あんま無理すんな、お前昨日から寝てないだろ」

「ちょ、リボーン、くすぐったいよ、」

「目の下にくまができてるぞ」

ちゅう、と音をたてて目尻にキスをして、くまの部分を親指で撫でる。

「俺は今日明日休みなんだろ?手伝ってやるよ」

「リボーン…」

「終わったら、家帰って寝るぞ」

「うん、ありがと…」

ツナはふふっと笑うとリボーンの唇に羽の様に軽いキスをした。






そんな光景をドアの隙間から覗いていた一般兵二人は信じられないという顔でひそひそと会話をする。

「…あれで沢田さんは35歳で大佐なんだよな」

「んで、リボーンさんは23歳だろ…?ありえねぇ…」

「つか沢田さん若いよな」

「若いっつうか、不老かもな、十代に見えるぜ」

「…いいなぁ、沢田さんのキスとか…甘いんだろぅなぁ…」

「…してみてぇよなぁ…」
「ツナとキスしたいなら俺に勝ってからにしろよ」

「ぇ、あ、リボーンさん…今のは、」

「まぁ、俺に勝とうなんざ一億年早いが…な」


「「ぎゃあぁぁぁぁぁ……!!」」






おわり

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