お昼寝日和

□ΩGreen−Caterpillar Happening
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HRが終わると、啓太は教室を出て会計室に向かった。今日の昼休みに西園寺に会い、時間があったら書類を取りに来て欲しいと頼まれたのだ。放課後はいつも通り学生会室に行くのだから、そんな事は全く苦にならない。急がしい西園寺や七条達の手を煩わせるくらいなら、自分が学生会室に行く前に会計室に寄ってしまえば済む話なのだから。
コンコン、とノックをすると、
「どうぞ」
と言う七条の声が聞こえ、啓太は、
「失礼します」
と言ってドアを開けた。
会計室には七条の姿しかなく、啓太は首を傾げた。
「西園寺さんはいないんですか?」
啓太が問いかけると、七条は微笑み、
「えぇ、少し出てくると言って行ったきりですが。郁に用でしたか?」
と問いかけてきた。啓太は苦笑すると、
「今日の昼休みに、西園寺さんに書類を取りに来て欲しいって頼まれたんです。俺、後でもう一度来ますね」
と言って頬を掻いた。すると七条は、
「あ、伊藤君。ちょっと待ってください」
と言って机に置かれた封筒を手にした。
「郁が伊藤君に頼んだ書類は、これですよ。後で伊藤君が来るから、渡しておいて欲しいと頼まれましたから」
七条がそう言って封筒を差し出し、困った様に苦笑する。啓太は封筒を受け取ると、
「どうかしたんですか?」
と問いかけた。
「いえ、郁が行ったのは学生会室なんです。美術部の予算の話をしに行くと言って。だったら伊藤君に頼む必要もなかったのでは、と思って」
七条が言い、啓太は、
「別にいいですよ。俺、西園寺さんにそう言ってもらえるの、嬉しいですから」
と言って微笑んだ。
「そうですか?」
七条が言うと、啓太は、
「はい。だって、西園寺さんが頼むって事は会計部の書類じゃないですか。そんな大事な書類を俺に持っていってくれって頼んでくれるって事は、俺もそれなりに信用されてるのかなって」
と言って照れたように笑った。七条は微笑むと、
「郁も僕も、伊藤君の事は信頼してますよ」
と呟いた。啓太は照れたように、それでも嬉しそうに笑うと、
「じゃあ七条さん、失礼します」
と言って頭を下げると会計室から出ようとした。
「伊藤君。また今度、遊びに来てくださいね」
七条に言われ、啓太は振り返ると、
「はい」
と言って会計室を後にした。
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