「アレン、みてみて」


ソファーに座って本を読んでいた僕は名前を呼ばれて顔を上げた。


「…はい?」
だから何ですか、と目で訴えると伝わったのか、不満そうに続けた。


「私の顔の変化に気付かない?」
「テカテカしてますね」
「つやつやと言ってよ」
「油モノでも食べたんですか?」
「違うわ!これはグロスというお化粧よ。どう?」

どうって…
言葉が見つからない。黙っているとしびれを切らした彼女が言った。


「キスしたくなった?」


「馬鹿馬鹿しい」

精一杯の虚勢を張って彼女に背を向けて歩き出す。
後ろから、おかしいな〜という君の声が聞こえる。


本当は油じゃない事くらい気付いていたし(それくらい知ってる)、とても似合っていたけれど。



素直に言えない
(だって、)
(赤い顔を隠すだけで精一杯)




本当に好きな子には素直になれないアレンさん(笑)


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