りんごふぁいたー小説
□朝りんご
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──お父さん
俺は兄に手を引かれ、まだ雨が降り続く薄暗い路地裏をとぼとぼと歩く。
人気のない其処は、ボロボロな服を着たホームレスの人をぽつぽつと見る程で、子供が居るような所ではない。
それでも、帰る場所がない俺達は歩き続ける。
『大丈夫だよ。父さんの代わりに僕が守ってあげるからね』
──お兄ちゃん
『心配しなくていいから、そんな顔しないで…』
雨が、痛いくらい体中を叩く。
もう長い間降り続いている雨は、止むどころか更に勢いを増すように感じられた。
お兄ちゃん。お兄ちゃん…
お兄ちゃん…
『怜…』
…綾夜──
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