シュライヤ・バスクード


□だいじょうぶ
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たとえこの先
太陽が当たらない
暗い、暗い部屋に閉じ込められても
全然こわくない。


だって貴方がそばに居てくれるから


大丈夫。




















『ねぇ、シュライヤ?』

呼びかけると、いつも優しい返事が返ってくる決して広いとは言えない四角いこの部屋。


「ん?おぉ、どした?」


ぼやけた視界のまま、そばにいるシュライヤへとちょっとだけ手を伸ばす。コツコツとシュライヤも私が居るベッド脇へと近づく。
暫くすると

“フワリ“

声と同じくらい温かいシュライヤの体温を指先が感知する。


『へへ…なんでもない』


指先がたどり着いたシュライヤの骨格は細くてしなやか。でも肩や腕、胸はしっかり男の子を象る。
キシッとベッドが鳴る。
シュライヤが腰を下ろした。

そのまま擦り寄ると、ちょうど“トクン、トクン”と緩やかに繰り返す心臓辺りに耳をくっつけて顔を埋めると、キュッと両腕で抱きしめてクスクス笑い声が聞こえた。


「何でもないのかよ」


シュライヤの皮膚から私の体中に響いてくる声、髪を梳かしてくれる長い指、おでこに寄せられた薄い唇、全部が心地好い。


『だいすき』


そう呟くと、少し照れたように早めになる鼓動。そしてさらにギュッと抱きしめてくれる。

シュライヤは私の事、どう思ってる?


『ねぇ…私、これから先もっと手のかかる女になっちゃうから…疲れちゃったら、いつでも別れていいからね』


そう言い終えると、くっついていた私とシュライヤの間を冷たい空気が割り込んだ。


「な!なに言ってんだよ!?おれは1度もお前を手のかかる女だと思った事はねぇよ!」


この暗くてボンヤリした部屋でも解るくらいに、シュライヤの顔が歪んでる。


「例え名無しさんの目がこの先…全く見えなくなっちまっても心配すんな!」

『でも、どんどん見えなくなってるの!私がいるせいでシュライヤに迷惑かけてしまうわ…』


急にガシッと掴まれた肩に乗るシュライヤの掌がジワッと熱くなった。そしてゆっくりとした深呼吸が聞こえてきた。



「迷惑とか疲れるとか、ちっとも思わねぇよ。そんな事、名無しさんが気にかける事じゃねぇ…。ただ、ただ!…お…おれが…ずっとおれが名無しさんのそばにいたいんだ!!」



勢いよく放たれた言葉に、暫く呼吸も忘れるほどだった。

それから一拍置いて、今度は逆に弱々しい声が聞こえてきた。


「ダメ…か?おれじゃ頼りになんねぇか?」


肩を落としてシュンとした子犬みたいな顔で私を見てるのかしら?何て頭の片隅で考えていると、


「名無しさん…」


またキュッと、今度がシュライヤが甘えてきた。

「おれ、もっと強くなるし、がんばれるから。そばに居させてくれよ…」

耳元で静かに話し出す声は私の鼓膜を擽る。



「あいしてんだ、名無しさんのこと」


心臓がこれでもか!ってくらい速かった。お互い。
ぼやけた視界が、溜まった涙でさらに滲んだ。


「ずっとそばに居させてくれよ」


いつの間にか頬を流れていた涙を、シュライヤが優しく何度も何度も拭ってくれた。


『本当に、い…いいの?こんな私で?』

「お前しかいねぇよ。つ〜かお前がいいんだよ」

クシャっと私の前髪を掻きあげるとチュッと軽く唇が触れた。

『シュライヤ…』

「返事、もらえねぇか?」


その言葉に今度は私からシュライヤの唇に唇で触れた。















この先、暗い部屋へと閉じ込められても大丈夫。

すぐそばには
いつも貴方がいるから。



end.
 

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