小説2
□団欒の風景
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団欒の風景
「おう、かごめ。前から気になっていたんだが……」
現代にて、犬夜叉と一緒に夕飯を食べている時だった。
珍しく真面目な表情をした犬夜叉がいきなり聞いてきたのでかごめは何事かと思った。
と思ったら、犬夜叉はご飯そっちのけで飼い猫のブヨにちょっかいを出し始める。
「なによ、犬夜叉。
話すか食べるか遊ぶかどれか一つにしなさいよ。
せっかくママが唐揚げ作ってくれたんだから、味わって食べなさいってば。」
犬だったらきっと肉が好きな筈だから、とわざわざ夕食のメニューを焼き魚から変えて貰ったのだ。もちろん、自分も手伝った。
自分で作った手料理は美味しいって言って食べてもらいたい。
「そうだよ〜、犬のにいちゃん。
ママの唐揚げは絶品なんだよ!」
あらあら草太ったら、とかごめの母は照れ隠しをした。
すると犬夜叉はまた真剣な顔でかごめに話し掛けた。
「前から気になっていたんだが………
なんで犬じゃなくて猫飼ってるんだ?」
「はあ…?」
食事の話かと思ったかごめはかなりの脱力感に襲われた。
「だから、なんで猫なんだよ。」
いきなりそんなこと聞かれてもねぇ。特に理由なんかないし……。
なーご、と欠伸をしたブヨが、今かごめが考えた事に「だよね〜」と返事をしたかのように思えた。
「ていうか、むしろなんで犬じゃなきゃいけないのよ。」
「かごめは犬が嫌ぇか?」
「別に嫌いなんかじゃないわよ。
基本的に動物は好きよ。
虫以外なら。」
「じゃあなんで敢えて猫にしたんだよ。」
(なんで今更になってこんな小さい事を気にしてるのよっ!)
たまに面倒くさい事を言ってくるなぁとかごめは溜め息をついた。
なんなの?私が犬好きじゃないように見えるの?ブヨ飼ってるから?関係ないんじゃ……?
が、その時急に思考回路が変わった。
「……もしかして犬夜叉、ブヨにヤキモチ焼いてるんでしょ?」
「え、ばっ、違っ!」
「焼いてるんだ〜。分かりやすいね、にいちゃん。」
「草太ぁっ!違ぇっつってんだろっ」
(分かりやす……っ!)
顔を真っ赤にして反論する犬夜叉にはまるで説得力がない。あたふたしながら叫んでいる。
「あんたねぇ……。
逆にあたしが犬飼ってたらそっちの方がヤキモチ焼くでしょ。
猫でよかったじゃない。猫で。」
とか言いつつも、なんだか嬉しくなったかごめ。飼ってる動物にまでヤキモチ焼くなんてどうかしてるわよ。
「そうだよ。にいちゃん心狭いし。
あ、ねえちゃん。もしかしたら友達が欲しかったんじゃない?」
新たに出てきた友達案にもかごめは少し納得した。
「そうかも。
犬夜叉この前ブヨに引っ掻かれてたしね。」
犬同士で戯れ合いたかったのかな?そんなことを考えたらなんだか笑えた。
「遊び足りないんじゃないかしら?
今度フリスビーでも買ってきましょうか?」
かごめの母の唐突な提案にかごめは笑いを堪えきれなかった。
「……おい、ふりすびぃってなんだ?」
「…『とってこい』の上級な感じよ。」
「……。」
やべぇ、自分から話を振ったのになんか面倒になってきた。
「今度ぼくと一緒にやろうよ!」
「誰がやるかっ!」
多分犬夜叉が本能に目覚めた時……妖怪化したときなら喜んでやるだろうな、などとかごめは恐ろしいことを考えていた。
犬夜叉は口を尖らせ、こんな話になる筈じゃなかったのに、とぶつぶつ呟いていて、草太とブヨは対照的な二人を見ては楽しんでいた。
そして、こんな日暮家もアリだと思う、とかごめの母は微笑む。
―――いつも楽しく、いつも明るい、そんな家庭を築くのよ、かごめ。
心でぽつり、そう呟きながら。
(終)