短編小説

□まっ白
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ここがぼくの世界。







都心から電車で20分ほどのところにある郊外の街。都心に近いのに緑が多く、海がある。近所の結びつきが強く平和で和やかなところである。
その街にある大きな病院の一角。関係者以外立ち入り禁止の病棟がある。小高いところにあるそれは林の中にあるが、すき間から見える景色はこの街を一望できるほどの絶景である。そこの3階の一番奥の病室に少年はいた。
その部屋は白の一色だけしかなかった。棚、机、ソファー、どれをみても白の物だけ。例外は、少年と彼の目の前にあるノートパソコン、窓から差し込む夕陽。
少年は眩しそうに、ベッドで体を起こしながら窓の外を眺めた。目を細め、微かに微笑む。夕陽でオレンジに染まる海と空は少年の心に平穏と感動、そして孤独の寂しさを与えた。しかし少年はその感覚が好きだった。
少年は白い服をオレンジ色に染めながらノートパソコンを開いた。まだたちあがらない暗いパソコンの画面には少年の顔が写った。少年の目は星のように輝いていた。
その目は世界をとらえる目。
その手は世界を動かす手。
彼こそが世界の中心。




まっ白


物語の始まり


 

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