親世代
□Girls
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満月の日も終わって、また僕はいつもと変わらず声のない生活を送っていた――
――というのは置いといて脈絡なく話は変わるんだけれど、
僕はこれでも二千歳だ。(正確に言えば、二千とんで九一歳…だったはず(多分))
二千年も生きて、千年は寝て過ごしていたけれど、残りの年ではそれこそ様々な人間を見てきた。
見てきたんだけれど、
――こんな状況は初めてだ
やっぱり人間っていうのは難しい生物だね。
心からそう思う。
目の前には寮を関係なく総勢12人ほどの女の子が、僕を取り囲むように仁王立ちしている姿があった。
女の子が?
僕を取り囲んで?
仁王立ち?
しかも険しい表情で?
…わからない。
人間の行動はたいていわかるし、あらかた予想も出来ると自負していたんだけれど(フィーやラズのような人種は除いて)
今回ばかりは例外だった。
この女の子達が何をしたいのか僕には全くわからない。
『…まずいな』
腕の中でゴドが呟いた。
* * *
奇しくも僕が初体験を決めたのは、何の変哲もないただの空き教室でだった。
いつも何故か当り前のような顔して傍にいるフィーなんだけど(血は争えないと言う言葉を実証中なのかと疑いたくなるほどだ)
今日は珍しく傍にいないしセブもいないので、
(あ、この部屋模様替えされてる)
『絵が10以上増えてるなぁ』
僕はゴドと、暇つぶしを兼ねた“大間違え探しインホグワーツ”をしていた。
そんな時だった。
『レイティアじゃない?』
『ラッキー!呼ぶ手間省けたじゃん』
『1人だわ』
『チールはうまくいったようね』
ちょうど通りかかった空き教室から会話が聞こえたのは。
(いくら小声で話してても僕には聞こえちゃうからね)
自分の名前が呼ばれたことに嫌な予感を抱きつつも、今日は珍しく生徒がいるんだねと、思うだけで知らない振りをして過ぎ去ろうとした。
したんだけど、
ガラッ
「!」
真横の扉が開く音がしたと思ったら、その部屋から子どもの手が伸びてくるのが見えた。
反射的に攻撃を仕掛けそうになってしまい、慌ててそれを抑えようとしている隙を突かれて、手の主に教室の中へと連れ込まれてしまった。
人間よりかは体重がそんなに重くないため女の子でも軽々と。
僕を連れ込んだ女の子はそのまま僕を教室の奥へと連れていって、冒頭で述べた通り僕の周りを他に教室内にいた女の子達と共に、ぐるりと囲んできた。
そして言ったのだ。
『これ以上フィーシネス様にまとわりつかないでくださる?』と。
ここで一つ、切実に、心の底から、嘘偽りなく、思ったままの質問を―――
(僕がまとわりついている方なの?)