きっかけスイッチ
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スコールもゼルもサイファーも、皆変わらない、皆同じ友達。


そう思ってた。


昨日までは。




「らっくしょ〜!!」


魔物に遭遇したスコール、ゼル、セルフィの3人はいつもと同じように戦闘をしていた。ゼルが先制攻撃を仕掛け敵のおとりになっている隙に、セルフィが魔法を詠唱する。セルフィを狙い横から攻撃をしてくる敵から彼女を庇うスコールが、セルフィの魔法と共に敵を切り倒し戦闘は終わる。魔法が得意なセルフィとリノアが居る時はいつもこの連携で戦っていた。正直に言えば、スコールにとってはこの連携が一番楽だった。しかし、これは魔法が得意なセルフィ(もしくはリノア)ももちろんだが、自分と同等に近距離戦を得意とし、尚且つ戦闘能力の高いゼルがパーティーに居るからこそ組める連携である。


「ケアル〜。」


一番前線で戦っているゼルが敵の攻撃を受けやすい。今日もいつもと同じように、セルフィがケアルで治療をしていた。


「悪いな、ゼル。ずっとパーティーに入れていて。」


「あー、いいよ全然。お前の方が大変だろ?それに、頼りにされてるってことだしよ!」


にかっと、屈託ない笑顔がスコールに向けられる。ゼルの言う通り、いや、彼が思っている以上に、スコールはゼルを信頼し、頼りに思っていた。「無茶だけはするなよ。」と言い、辺りの様子を伺う。


「はいっもういいよ〜。」


「サンキューなセルフィ。」


「んーん、あたし、いつもゼルとスコールに庇ってもらってるから、これくらい全然〜。二人の方が大変だよ〜。」


「戦闘の大変さに優劣はないんだぜ、ほら、エーテルで魔力回復しとけよ。疲れてんだろ?」


ゼルがぽいっとエーテルを軽く投げると一瞬きょとんとした表情を見せるセルフィ。


(何でわかったんやろ?)


ゼルの言う通り、実は魔法を使うのは魔力と精神力をかなり使用するため、肉弾戦よりも疲労度が高かった。立て続けて行われた戦闘に若干疲労の色が現れていたのだが、二人には気付かれないようにしていたつもりだった。気付かれたら絶対に、優しい二人は休憩しようと言うに決まっている。有難い話ではあるが、自分のせいで任務が滞るのは二人に申し訳ないと思ってしまうのだ。


「おかしいな、急に風が止んだ。」


スコールが空気の異様な変化に神経を研ぎ澄ませる。瞳の色は完全に、警戒色。殺気立つスコールをセルフィはエーテルを飲みながらぼんやりと見つめていた。完全に戦闘のスイッチがオフになっているセルフィは、後ろに忍び寄っていた影に気付かなかった。


「!!セルフィ!!!」


「あぶねえ、セルフィ!!!!」

ゼルの声と共に、セルフィの視界が暗闇に覆われる。それと同時に地面に倒された感触を背中に感じた。聞こえてきたのは剣で何かを切る音と何かの悲鳴。ドサッという大きな音が地面を伝わり響き渡った。


「モルボルか…。どうりでやけに静かなわけだ。」


「助かったぜスコール…一撃かよ。」


「たまたま急所に当たった。危なかったな。」


「…っと、大丈夫かセルフィ?」

ゼルは自分の下にいるセルフィを思い出して声を掛けた。呆然としている彼女の顔は赤く染まっている。不思議に思い、もう一度声を掛けたが返事がない。


「おーい、セルフィ…ぐえっ!!」


いきなり腹を膝で蹴られ、ゼルは片手で蹴られた箇所を押さえて呻く。隙間から抜け出したセルフィは顔を真っ赤にして立ち上がった。


「ご、ごめん、でもゼルが悪いんやで!」


「って…俺が悪いって!!庇ってやったのに何で!!」


「〜……///そ、そんなの、言えるわけないやん!!!」


そう言ってスタスタと歩いていくセルフィを、この野郎!と叫びながら追いかけるゼル。スコールは、あまりバラバラに行動するのはよくないと散々言っておいたのだが、今の二人にはその事は全く頭に残っていないようだ。


「意識したら恥ずかしくなったわけか。」


ポツリと呟き、スコールも二人の後を追いかける。見ていて飽きない二人の間に芽生えたものを観察するのも悪くない。これからしばらくは他のメンバーには悪いが、今の三人でパーティーを組もうと考えるスコールだった。


―任務が楽しくなりそうだな。



◆きっかけスイッチ◆

(…気付いちゃったから恥ずかしくて普通でいられへんやん。)


―つまりは、好きってこと。


***********
アトガキ

セルフィがゼルのことを意識しだすのって、何かきっかけがありそう。

この話ではゼルは最初からセルフィのことが好きなこと前提。

だからセルフィの小さな変化も見逃してません。


最後スコールでしめたけど(笑)



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