短編

□大切なモノ
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鉢屋→夢主/友人
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「大切なモノがとられる?」

「うん、かもしれないってさ」

ここ忍術学園の食堂で、今人気になっているよく当たると有名な、くの一教室のユキちゃんの貝殻占いについて話をしている人物がいた

「ユキちゃんの占い‥当たるって有名だしなぁ
どうしよう‥やだなぁ、大切なモノがとられるかもしれないだなんて
ねぇ五年の鉢屋三郎くん」

くの一教室のユメは食堂の長い机に突っ伏し
ぐだぐだと仲の良い忍たまの鉢屋に相談をしていた

「そう言われてもなぁ、だいたいお前の大切なモノってなんなんだよ」

「いや〜それがさぁ、思い浮かばないんだよね」

そんな間の抜けたユメの返事に、鉢屋はガクッと半分こける

「お前なぁ〜‥、女だったらさぁ、ほら‥髪飾りとかー、友達とか、自分自身とかさ」

身を乗り出して鉢屋が次々と例をあげていくと
それにあわせてユメはうなずきながら手をうつ

「あ〜ぁ、なるほど。髪飾りはないけど‥友達ねぇ〜」

そう言いながら顎に手をそえ真剣な表情になる

「え、ちょっ、友達って……、まってそれスッゴイ嫌だ!確かに友達って大切だけど、友達とられるって‥どういう状況!?」

ユメは勢いよく机に両手を叩きつけた

「それは……」

さぁねー
と素っ気無く鉢屋は遠くを見る

そんな鉢屋にユメは
私の友達とらないでよ、と念を押すように言った

その言葉に鉢屋は少し気難しい顔をして、すぐ後に少し意地の悪い表情にかわった

「まぁお前の友達はとらないけど‥。ユメ自身ならとるかもな」

鉢屋の目線はまだ遠くで

驚いたユメの視線は相変わらず鉢屋に向いたまま
そんなユメの目はまさに点で、頬杖をついたまま無言

冗談で返されると思っていた鉢屋は、まさかの反応で
自分で言ったにも関らず気恥ずかしくなり

この空気をどうにかしようと、数回咳払いをしてみる

その咳払いでフと我に返ったユメは、困った顔で頬を指でかく

「私をとったところで、何も得はないんだけど‥」

と、また予想外の答えに
鉢屋は豪快に後ろにのけぞり椅子から落ちる

「お前なぁー!」

鈍感なのか!?
と内心で怒鳴りながら頭をかかえる

そんな鉢屋を見ながらも
ユメはキョトンとした表情をしていた

「まぁいい‥ちょっと来いよ」

鉢屋は立ち上がり、食堂の出入り口のところまで行くとユメに手招きをする

「なに?」

何か面白いものでも見られるのではと期待を胸に
ユメは鉢屋のもとへと向かった

鉢屋は食堂の出入り口の柱の間に
人一人入るぐらいのスペースをあけて立っている

その間に手招きをしてユメを入れる

「あっち見て」

鉢屋はそう言いながら自分と向き合っている廊下を指差した

ユメは出入り口に手をそえて
顔だけを廊下に出す形で指し示された方向を見る


「ん?」

鉢屋の指差す方向には何もなく
人すら歩いていなかった

なにもないけど
とユメは振り向き鉢屋を見上げた


「っ!?」

その瞬間、ユメの目の前には鉢屋の顔

ユメと鉢屋の唇が接触した

数秒後、腰を曲げていた鉢屋は姿勢を正した
表情は満面の笑み

まさかの出来事にユメは真っ赤な顔で
口をぱくぱくとさせる事しかできなかった


「ユメの大切なモノ、とっちゃった」

そう言うと鉢屋は両手を頭の後ろにそえて指を組み

先ほど自分が指差した方向へと歩いて行った





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