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□梅雨入り(香取)

香取先輩は今日も練習。
私はその練習が終わる頃を見計らって、傘を二本持って玄関を出た。
いつもなら迎えに行ったりなんてしないけど、今日は緊急事態。
なんでも予想より梅雨入りが早まったとか何とかで、朝には晴れていた空が、正午にはすっかり雨模様になってしまったのだ。
つま先をほんのり濡らしながら、先輩達のいるグラウンドへ。

徐々に見えてきたグラウンドには、雨にも負けじと食らいつくように練習する野球部の姿があった。
香取先輩はグラウンドの隅の方で唐沢先輩と投球練習をしている。
泥だらけになりながら練習する先輩は、なんだか凛としていてとても綺麗だった。

多分あと少しで練習が終わるだろうから、桜の木の影で先輩を待つことにした。


それから数分経つと、監督の声に応えて部員が一斉に集合した。
反省をして、予定をきいて、そして挨拶をして解散する。

みんな散り散りに部室へ向かう中、香取先輩は小走りで私の方へ向かってくる
私ももちろん、小走りで香取先輩の元へ向かった。

「入れてちょーだい」

体を縮めて傘に隠れる香取先輩は、なんだか私より女の子らしくて笑ってしまった。

「もう、髪がぐちゃぐちゃになっちゃった」

「ふふっ…大丈夫ですか?寒くない?」

すると、先輩が私の背中にふわりと抱きついた。

「こうすればあったかいわよ」

「!!」

先輩の温もり、汗の匂い、息遣い。

先輩、私は暖かいどころか、とてもとても熱いです。



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