GKの散文

□泣いたりなんかしねぇって
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その日が特別疲れていたとか力が入っていたとかではなかった。
いつものように勝利に貪欲で、全力で考えて、限界まで走って。
あの時踏み込まなかったら後悔していただろーし。
だからいつも言ってんじゃん。
怪我したら今日がそいつのラストゲームだって。
みんな騒ぎすぎだっつーの。
話には聞いてたけど驚いたね。
本当に体中に響いたよ。
むしろ耳ん中で何かが弾けたんじゃないかって位はっきり聞こえた。
右足が急に無くなって体が落ちる。
そう、痛いとかどーとかの前になくなった感じがした。
そのあと激痛が襲ってきて。
でも物理的な痛みなんてどーでも良くてさ。
ソッコー手術して、そのあと主治医が言った「もう走れません」なんて。
いつかは言われるだろーって分かってたけどやっぱムカつくね。
だって自分の体だぜ?
なのに他人に限界決められてやんの。
ふざけんな。
「日常生活に戻るまで大変ですがリハビリ頑張りましょう」
なんてさぁ。
日常生活ってなんだよ。
フットボールの無い日常なんて存在しねぇよ。
さぁてこれからどうしようかな。
なんだよシロさん。
そんな顔して。
分かってた事じゃん。
俺、憐れまれんの嫌いなんだけど。
あーもううざいなぁ、頭撫でんなよ。
ガキじゃないんだから。
覚悟くらい出来てたっつーの。
つーかさ、もうヤんないからね?
俺らを繫ぐものはもうなくなったんだからさ。
だから抱きしめてくんなって。
ったく。
最後だからさ、濡れたあんたの肩口が乾くまではこーしててもいいよ。
ホント、最後だからね。
でも、まぁ。
俺はあんたの事、気に入っていたよ。

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