GKの散文

□二点交差
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目覚ましが起床時刻を告げる前にゆっくりと目を開けると
カーテンを透過した朝日が部屋をうっすらと明るくしているいつもの朝。
横に三歳児よろしく酷い寝相でベッドを我が物顔で占領している東京Vの王様がいるのも日常。
こいつがうちに入り浸るようになったのは突然のようなゆっくりと侵食してきたような曖昧さ。
明確な理由を問えば「セックスしたいだけ」と答えられてしまうだろうが自分には不明瞭だ。
こちらに背を向けて、タオルケットを抱えこみ、胎児の様に丸くなって眠っている男の顔はピッチの上で見るより幼く見える。
時たま空気を食み、咀嚼する様は幼い子供、寝相と同じ三歳児のような錯覚を覚えるのは
自分の心情の所為ではなく、このふわふわとやわらかい毛先の転がるような猫っ毛の所為にしておきたい。
あと5分で目覚ましが鳴る。
そっとアラームを解除して、隣の生き物を起こさないようにベッドからすり抜けてシャワーを浴びる。
浴室からリビングに戻っても生き物はベッドから動かない。
朝食の準備をする。
自分用のメニューと未だベッドで横たわっている生き物は同じ人間だが根本的に違う。
考え方とか思考とかだけではなく驚くほど体質なども違う。
同じ人間なのに。
遺伝子の相違を解明してみたいくらいだ。
きっとまるっきり違うのだろう。
自分用に脂の少ない、でも昼まで乗り切るのに必要なエネルギーや栄養素をバランスよく詰め込んだ朝食を用意する。
大概和食だ。
王様は高カロリーで量が少なくて血糖値がすぐ上がるもの。
大概洋食だ。
それではバランスが悪いからと無理やり野菜ジュースを飲ませたりしたが
全力で拒否されたため(むしろあれは駄々をこねているようだったが)最近ではフルーツでミックスジュースを作って飲ませている。
しかし朝からから揚げやハンバーガー、チョコケーキなどが食べれる身体が信じられない。
自分は家を出る大体二時間前に起きてシャワーを浴び、朝食を作って、身支度をして
コーヒーを飲みながら新聞に目を通し、簡単に片づけをしてから家を出る。
一方は家を出るギリギリに目を覚ます。
酷い時は五分前。
朝食を流し込んで駆け込むように着替えて、竜巻のように身支度を整え…俺に言わせればまったく整っていないが、家を飛び出る。
これで遅刻や寝坊が無いから驚く。
…プライベートでは9割遅刻するが。
さて、自分の食事も済んだ。
新聞も気になる記事はチェックした。
王様を起こしに行こう。
出発時刻まであと10分。
どたばたと準備をしている姿が見られるのは自分だけだと優越感に浸らせて欲しい。
本当は何人も相手がいるのは知っているけれど。

そして情事の後にすぐに眠りに落ちて、シャワーを浴びずに出掛けるから
体中にべったりと俺の匂いがついているのを気にしないお前を嬉しく思うのを許して欲しい。


例え、サッカーと身体しか交わるものが無かったとしても。

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