GKの散文

□螺旋
1ページ/6ページ

梅雨独特の嫌な空気さえも遮断するような閉鎖空間で
持田はソファに脚を投げ出してだらしなく横たわっている。
この部屋のコンディションは快適で最悪だと、口の中で転がして携帯電話を耳に当てる。
コール音3回。
「もしもし、シロさん?いつもの部屋にいるから早く来てね」
そういってわずか5秒の通話を終了させる。
返事を聞く必要も無いー…何度もこうやって持田は城西を呼び出して彼の予定を崩している。
その度に小言は言われるものの本気で怒られた事は無い。
どういう事か分かっていてここにくるのに小言を言うシロさんも大概だよなぁと持田は伸びをして一人ごちる。
目を閉じると瞼に白熱灯の熱を遠くに感じる。
透ける血管の赤。
時計の秒針の音がうるさい。
この部屋には時計が無い。
ああ、自分の腕時計かと持田は自分を腕から拘束するこの枷を外して鞄の辺りに放った。
再び目を閉じると持田の感覚はある一転に集中しはじめる。
かろうじて残っている冷たさの奥に熱が燻っている。
その熱は痛みを超えて焦燥感にも似ている。
持田はふぅっと息を吐き、ゆっくり瞼を開けて右足に纏わり付く白い包帯を見た。
これもまた持田を拘束する枷のひとつだ。
「…自分の身体すら好きにできねぇって何なんだよ」
天井に言葉を投げた時控えめにドアが叩かれた。
「開いてるよー」
持田はソファに仰向けになったままドアに向かって返事をした。
「…一体何の用事だ、持田」
城西がため息を付きながら部屋に足を踏み入れる。
「ぶは!何の用事って、分かってて来てんでしょ?超ウケる」
持田はソファから鳥のように離れて城西の前に立つ。
それは猛禽類。
獲物を食らう飛翔。
「そんなつもりはないぞ、そもそも…!」
城西が持田を諭そうとする前に鷲の爪は城西の腕に食い込む。
持田は城西の腕を強く引き身体を寄せ、白いシャツから覗く首筋に舌を這わせる。
「…!な、お前…!」
身をよじって持田から逃げようとするが持田は城西を掴む腕の力を一層強くして
反対の手で城西のストールをするすると外していく。
その間にも持田の舌は首筋から耳を這い回り水音を絡みつかせた息を吹きかけ
「俺たちの間にサッカーとセックス以外無いなんてわかりきったことじゃん」
持田は噛み付くように城西の耳を口腔に含んだ。
唾液が持田の口の端から、城西の首筋に滴り落ちる。
その軌跡を舌でなぞり道を開くように持田は城西のシャツのボタンに手をかけた。
降りてくる舌に背骨が痺れる思いを感じて城西は持田の肩を強く掴む。
「もち、だ…やめ…」
強く掴んだ肩を押し返そうとしたが逆に肩を強く押されて先ほどまで持田が寝そべっていたソファに突き飛ばされた。
がつんとソファの縁に城西がぶつかった音がしたが、
まるで聞こえないように持田は表情一つ変えず、色素の薄い目を見開いて静かに見下ろす。
天井とともに視界に入る持田を見上げて城西は何かを思ったが何かは分からなかった。
覆いかぶさるように持田は城西に跨り、肌蹴たシャツの隙間に手を滑り込ませ皮膚をなぜる。
「やめ…ろ…!」
悪戯に動く指先に呼吸を乱されまいと城西は薄い唇を噛み締めた。
「あはは超ウケる。こんなんなってんのにやめろとかマジ説得力ねぇよ」
持田の手が十分に硬さと熱を孕んだ核心を捉え、ゆっくりとすりあげていく。
「は、っ…そんなつもりじゃ…」
毎度繰り返される城西の持田に対する拒否と寛容を持田は前戯みたいなものだと思っていた。
「そのつもりで、来たくせに」
持田は城西に吐き捨てるように告げ、自分の指を口の中の突っ込み唾液を十分に絡ませた。
ぐちゅ、ぐちゅと体の奥底から水分を引き出すように口腔内で指を躍らせれば、
舌を離れた指先から引く糸はぬらぬらと照り、持田はそれを城西自身に擦り付ける。
ぬるりとすべりを増した指が城西を追い立てると先を求めるように先端から露があふれる。
それを見た持田はゆっくりと口角を上げ「欲しいって言っちゃえばいいのに」と笑い衣服を脱ぎ捨てた。
城西からは返事は無く辛そうな視線が持田に向けられているだけ。
「ね、ぐちゃぐちゃに、してよ」と城西の喉元に零して先端を体内に誘い入れる。
準備も何もしていない身体は閉ざされていたが構わず持田は腰を落とした。
ぎちっと肉と肉が鬩ぎあう音が身体に響く。
「あはは、流石に痛ぇな…」
腰を逸らせ流し目で律動を誘う持田は喉元でクククと笑っている。
城西は最初、窮屈すぎる持田の身体に顔を顰めていたが
脇腹に引っ付く持田の内腿の冷たさを感じ少しだけ上に圧し掛かっている男の身を案じた。
少しだけ。
「アハ、ずっげぇ嫌そうな顔」
持田は瞳孔を開いて悦に入ると更に激しく身体を動かす。
二人の身体の間で持田の熱が更なる刺激を求めてだらだらと涎を垂らしていが
ソコには触れず、もちろん触れさせずに持田は息を切らして身体を上下させる。
肉の音と水の音ばかりがただひたすら響くこの室内は湿気で息苦しいように感じ、
この部屋のコンディションは最悪で快適だと持田は目を細めた。
眼下には普段綺麗な言葉を並べる「みんなのキャプテン」が
快楽に飲まれまいと、しかし快楽を逃すまいと拮抗する理性と欲に揺さぶられていて
その情景に持田の身体はきゅうっと捩れさらに動きを加速させる。
「あ、は。あぁ、そのまま、あ、イく」
自ら欲のままに身体を揺さぶっている持田の声は単音のようで、城西の肩に押し付けた掌がきつく握られた。
ひくひくと先端を開閉させ欲望の露を零す持田の欲は腰をよじるのと同時に白濁の欲を撒き散らして頭を垂れ、
その瞬間絡めとるように収縮した内壁に城西は熱を打ちつけた。
「…やっぱソファってやりづれぇ」
ずるりと体内から城西を抜くと注ぎ込まれた欲が持田の太腿をつぅと伝った。
はっ、はぁとお互いの息が切れていたが持田は「…足んねぇなぁ」と呟き城西の双眼を捕らえ
「ね、シロさん。ベッドいこ」と金に近い虹彩を光らせた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ