TQの散文

□五感
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1:目





「うーん、何かすっきりしないなぁ」

星野が洗面所から目を擦りながら出てきた。

「なん?まだ何かはいっとると?」

メグルが星野の目を覗き込む。

「見た感じは何も無いんだけどやっぱ違和感あるんだよね」

そういってしぱしぱと繰り返し瞬きをするとうっすらと涙が浮かんでくる。

「痛か?」

メグルは星野の両頬に手を置き息のかかるほどの距離で星野の大きな目を凝視している。

「痛いって程ではないけど、違和感があって気持ち悪い感じかなぁ」

と答えるも、瞬きする度に大粒の涙がぽろぽろと転がるように星野の頬を伝う。

「あ」

じっと星野の目を見つめていたメグルが眼球の上に張り付く透明な繊維に気付いた。

「星野君、星野君。何か透明な糸みたいなもんが眼球ば張り付いとるよ」

そう教えてもらい星野は何度も見た眼球を鏡に映す。

そして目の痛みの原因である繊維とやらを懸命に探すが

「うーんなんだろ、焦点が合わないのか自分では全然見つからないや」

そもそも見つけたところで打つ手は無い。

目薬も何度も点したし、洗浄もしたが取れないのだ。

もはやもう自然に体に備わっている排出能に頼るしかないではないか。

「洗っても取れないし、諦めるしかないかぁ」

と鏡を置いた星野に

「星野君。じっとしとってね」

とメグルはいい、星野の両頬に手を当てて顔を固定する。

メグルの顔が星野に近づいた瞬間


目の前に広がる肉の色

生暖かい感触を伝える眼球

「あっ・・・」

星野の眼球を慈しむ様に滑るメグルの舌

その動きに合わせて星野の体に得も言われぬ感覚が走る。


「ちょ、メグル・・・な、にして・・・」

決して強くは無いが、無視することの出来ない快楽に星野は驚いた。

星野の眼球から舌を離したメグルは舌先を指でつまみ

「ほら、糸とれたばい」

と得意げに笑った。

それどころではない星野は顔を赤くして口元を押さえている。

「何ね?気持ちよかったと?」

メグルが悪戯っぽく笑う。

何も答えられない星野を見て

「俺は気持ちよかよ。舌先に伝う感触がたまらんばい」

とメグルはうっとりと星野の眼球を眺める。

「ね、俺のも舐めて欲しか」




怖かったのは。拒めない、と確信した自分自身だと星野は思った。









            
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