小説2
□トラウマ 1
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今宵も雨。勉強を終わらした俺はいつものようにそのまま椅子に座って机に頬をつく。端から見れば、何か悩んでいるように。何か考えているように。だが、俺は何も考えてなどいない。考えたくない。考えれない。窓から外を覗けば先程までの雨が雪に変わっていた。
「もう冬か」
俺は7月から外に出ていない。全国で優勝した辺りはまだ学校に通っていたが、とある事件によって俺はずっとこの部屋から出ることができない。所謂、引きこもりだ。そして、不登校。青学の秀逸と呼ばれていた俺がこの何ヵ月間も外に出ていない。最初の頃は受験がどうこう言って怒ってばかりいた親だったが、今では何も言わない。呆れているのだろう。俺にはきっともう何も期待していないだろう。現下では俺の部屋に入ろうとすることも一切ない。逆に、入りたくないという思いが伝わってくる。
「秀一郎、電話よ。菊丸君から」
返事はしない。
する必要などないから。
「もしもし、どうしたの。」
「ああ、元気だよ。」
「そう。分かった。いつでもいいよ」
「明日か。急だね。いや、別にいいんだ。」
「うん、じゃあ明日。待ってるよ」